トモル
ねえルミナ、高校の時間割にある「総合的な探究の時間」って、そもそも何をする時間なの? 必修なのか、何単位あるのかも知らないんだ。
ルミナ
総合的な探究の時間は、高校の全生徒が履修する必修の時間だよ。自己の在り方生き方を考えながら、自分で課題を発見して解決する力を育てるんだ。卒業までに3〜6単位を配当するのが標準で、国は目標と内容の定め方を示し、具体的な内容は各学校が定めるよ!
トモル
えっ、選択じゃなくて全員なんだ。単位数まで決まっているのは知らなかったよ。
ルミナ
そうなんだ。高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説の総合的な探究の時間編に、目標も単位数も書いてあるよ。今日はその中身を、目標・内容・単位数・進め方の順に見ていこう!
トモル
ありがたい。名前は知ってるけど、制度としてどうなってるのかは全然知らなかったよ。
総合的な探究の時間とは高校の教育課程に置かれた必修の時間

ルミナ
まずは全体の骨組みから。この時間は、国が目標と内容の定め方を示して、具体的な中身は各学校が決めるという珍しいつくりになっているんだ。
トモル
中身が決まってないの? 教科書もないってこと?
ルミナ
解説にはっきり書いてあるよ。各教科・科目等のように、どの学年で何を指導するのかという内容を学習指導要領に明示していないんだ。地域や学校、生徒の実態に応じて、創意工夫を生かした内容を各学校が定めることが期待されているからだね。
トモル
じゃあ学校によって中身が全然違うんだ。
ルミナ
うん。だから「隣の高校のやり方がうちに合わない」のは当たり前なんだ。まずは自校の全体計画を見るのが出発点になるよ。
トモル
高校で名前が「探究」に変わったのはいつだっけ?
ルミナ
高等学校は平成30年(2018年)3月30日に学習指導要領が公示されて、平成34年(2022年)4月1日以降に高校の第1学年に入学した生徒から年次進行で適用されているよ。名前の違いそのものは総合的な学習の時間と探究の違い|名称と目標を比較で詳しく書いたから、今日は高校の中身に集中するね。
トモル
了解! じゃあ、その「国が示す目標」から教えて。
総合的な探究の時間の目標は国と学校の二階建て
ルミナ
目標は二階建てになっているんだ。一階が学習指導要領の「第1の目標」、二階が各学校で定める目標だよ。
トモル
まず一階の条文を見せて。
ルミナ
こう書かれているよ。探究の見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、自己の在り方生き方を考えながら、よりよく課題を発見し解決していくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す、だね。
トモル
長い…! でも「発見し解決していく」がポイントっぽいね。
ルミナ
そこが高校の特徴だよ。解説では、この目標が大きく二つの要素でできていると説明しているんだ。一つは学習過程の在り方、もう一つは育成を目指す資質・能力だね。
トモル
その資質・能力って、3つ並んでるやつ?
ルミナ
そう、三つの柱に対応しているよ。表にするね。
| 目標の項 | 対応する柱 | 条文の中身(要約) |
|---|---|---|
| (1) | 知識及び技能 | 探究の過程で課題の発見と解決に必要な知識及び技能を身に付け、課題に関わる概念を形成し、探究の意義や価値を理解する |
| (2) | 思考力、判断力、表現力等 | 実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし、自分で課題を立て、情報を集め、整理・分析して、まとめ・表現する |
| (3) | 学びに向かう力、人間性等 | 探究に主体的・協働的に取り組み、互いのよさを生かしながら、新たな価値を創造し、よりよい社会を実現しようとする態度を養う |
トモル
(2)が、よく聞く探究の4段階そのものだ!
ルミナ
そのとおり! 課題の設定から情報の収集、整理・分析、まとめ・表現までが目標の条文に埋め込まれているんだ。
トモル
で、二階の「各学校の目標」は何を書くの?
ルミナ
解説は二つの要件を挙げているよ。一つは第1の目標に示された二つの基本的な考え方を踏まえること。もう一つは、育成を目指す資質・能力を三つの柱それぞれについて第1の目標の趣旨を踏まえることだね。
トモル
つまり、自由に書いていいわけじゃないんだ。
ルミナ
うん、器は国が決めていて、そこに自校の言葉を入れる感じだね。じゃあ次は、その中に入れる「内容」を見てみよう!
総合的な探究の時間の内容は各学校が2つセットで決める
トモル
内容って、単元名みたいなものを並べるの?
ルミナ
ちょっと違うんだ。今回の改訂では、内容として「目標を実現するにふさわしい探究課題」と「探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力」の二つを定める必要があるとされたよ。
トモル
ふたつでワンセットなんだね。それぞれ何を指すの?
ルミナ
探究課題は、生徒が探究的に関わりを深める人・もの・ことのこと。従来「学習対象」と呼ばれてきたものに相当するよ。具体的な資質・能力は、その課題に取り組む中で育てたい力を、自校の目標に即して具体化したものだね。
トモル
関係を一言でいうと?
ルミナ
探究課題が「何について学ぶか」、具体的な資質・能力が「どのようなことができるようになるか」を表している、と解説は説明しているよ。
トモル
探究課題って、どんなものを選べばいいの?
ルミナ
解説には例示が4つあるよ。あくまで参考として示されたものだけど、自校の課題を考えるときの手がかりになるね。
| 探究課題の種類 | 解説の例示 |
|---|---|
| 現代的な諸課題に対応する横断的・総合的な課題 | 国際理解、情報、環境、福祉・健康など |
| 地域や学校の特色に応じた課題 | 町づくり、伝統文化、地域経済、防災、都市計画など |
| 生徒の興味・関心に基づく課題 | 生徒が発達段階に応じて興味・関心を抱く事柄 |
| 職業や自己の進路に関する課題 | 就職や進学を含め、自己の生き方を現実的に検討する上で必要となる課題 |
トモル
4つ目に「進路」が入ってるんだ! じゃあ進路説明会をこの時間にやってもいいの?
ルミナ
そこは注意が必要なところだよ。解説は、探究課題に求められる要件として、探究の見方・考え方を働かせて学習することがふさわしいこと、横断的・総合的な学習としての性格をもつこと、自己の在り方生き方を考えながら課題を発見し解決することに結び付く資質・能力の育成が見込めることの3つを挙げているんだ。
トモル
なるほど、進路そのものを扱うんじゃなくて、探究として成り立つかどうかが条件なんだね。
ルミナ
そう! 生徒の興味・関心に基づく課題についても、学習の質的高まりが期待できるかどうかを教師が十分に判断する必要があると書かれているよ。やりたいことをそのまま通すのとは違うんだ。
トモル
目標と内容が決まったら、あとは時間をどう取るかだね。
総合的な探究の時間の単位数は卒業までに3〜6単位

ルミナ
ここが高校ならではの話だよ。小中学校は授業時数で数えるけれど、高校は単位で数えるんだ。
トモル
何単位って決まってるの?
ルミナ
総合的な探究の時間は全ての学校で教育課程上必置とされ、その単位数は3〜6単位を標準とされているよ。全ての生徒に履修させる時間だから、標準単位数は各学科に共通する教科・科目と並べて総則に定められているんだ。
トモル
3単位より少なくしてる学校も聞くけど…?
ルミナ
例外の規定があるんだ。学習指導要領には「特に必要がある場合には、その単位数を2単位とすることができる」とあるよ。ただし解説は、2単位とすることができるのは限定的であることに十分注意しなければならないと念を押しているんだ。
トモル
どういう場合なの?
ルミナ
学校設定教科・科目や他の教科・科目で、横断的・総合的な学習や探究が十分に行われる場合などが挙げられているよ。しかも、標準単位数を減らす場合は、その理由について外部への説明責任が果たせるよう教職員の共通理解を図ることまで求められているんだ。
トモル
けっこう重いね。単位の認定はどうやるの?
ルミナ
各教科・科目と基本的に同じだよ。生徒が学校の定める指導計画に従って学習活動を行うこと、その成果が目標に照らして満足できると認められること、この二つが要件になるんだ。
トモル
時間割の置き方は自由なの?
ルミナ
年間35週行うことを標準とはしていないから、卒業までの各年次で実施する方法のほか、特定の年次だけで実施する方法も可能だよ。特定の学期や期間に集中して行う組み方もできるんだ。
トモル
夏休みの課題にして終わり、はダメなんだ。
ルミナ
そう、そこは明確に線が引かれているよ。じゃあ実際の進め方を見ていこう!
総合的な探究の時間の進め方は探究のプロセスを回すこと
トモル
授業では何をするの?
ルミナ
骨になるのは探究のプロセスだよ。①課題の設定→②情報の収集→③整理・分析→④まとめ・表現という流れで、これが繰り返されていくんだ。
トモル
1回で終わりじゃないんだね。
ルミナ
うん、まとめ・表現をしたらまた新しい課題が見えてきて、次の探究が始まる。この繰り返しを解説では「探究」と呼んでいるよ。4段階それぞれの手立ては探究学習の進め方|4段階の回し方と計画の作り方で詳しく扱っているから、ここでは高校ならではの話をするね。
トモル
高校ならでは、って?
ルミナ
高校では、探究の過程がより高度化し、探究が自律的に行われることが期待されているんだ。解説は高度化を4つ、自律化を3つの姿で説明しているよ。
トモル
それぞれ教えて!
ルミナ
高度化のほうは、目的と解決の方法に矛盾がない(整合性)、適切に資質・能力を活用している(効果性)、焦点化し深く掘り下げて探究している(鋭角性)、幅広い可能性を視野に入れながら探究している(広角性)の4つだね。
トモル
自律のほうは?
ルミナ
自分にとって関わりが深い課題になる(自己課題)、探究の過程を見通しつつ自分の力で進められる(運用)、得られた知見を生かして社会に参画しようとする(社会参画)の3つだよ。探究の質そのものの話は探究学習で大事なことは?3つの質と評価の考え方も合わせて読むと見通しがよくなるね!
トモル
学校としては、どこから手をつければいいの?
ルミナ
計画は二層で作ることになっているよ。入学から卒業までを見通して基本的な在り方を示すのが全体計画、それを踏まえて学習活動・時期・時数を示すのが年間指導計画だね。
- 学校の教育目標とつなげて、自校の総合的な探究の時間の目標を定める
- 目標を実現するにふさわしい探究課題を設定する
- 探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力を設定する
- 全体計画に目標・内容・学習活動・指導方法・指導体制・学習の評価の計画を位置付ける
- 年間指導計画で、どの学習活動をいつ、どのくらいの時数で行うかを決める
ルミナ
解説では、校長のビジョンとリーダーシップの下で全体計画と年間指導計画を作成しなければならない、とされているよ。評価の設計は探究学習の評価はどうする?観点と規準の作り方で扱っているね。
トモル
計画に「評価」まで入るんだ。ところで、時間割には「地理探究」とか「理数探究」もあるよね。あれとは何が違うの?
「探究」がつく科目と総合的な探究の時間の違い
ルミナ
いい質問! 今回の改訂では、総合的な学習の時間が総合的な探究の時間に変わっただけじゃなくて、古典探究・地理探究・日本史探究・世界史探究・理数探究基礎・理数探究という科目も新設されたんだ。解説も、この違いに注意するよう促しているよ。
トモル
並べて見せて。
| 区分 | 何を探究するか |
|---|---|
| 総合的な探究の時間 | 実社会や実生活の課題を、教科の枠を越えて横断的・総合的に探究する |
| 古典探究・日本史探究・世界史探究・地理探究 | その科目の領域範囲の中で生じる鋭角的な質の探究を想定している |
| 理数探究 | 数学的な見方・考え方や理科の見方・考え方を組み合わせるなどして働かせた探究を想定している |
トモル
教科の中で深めるのか、教科をまたぐのかの違いなんだね。
ルミナ
そう! ただし解説は、他教科等で育成を目指す資質・能力との関連を重視することも求めているよ。各教科・科目で身に付けた力を関連付けて、総合的に働くようにするのがこの時間の役目だからね。
トモル
専門学科の「課題研究」とはどういう関係?
ルミナ
職業教育を主とする専門学科では、相互に代替できる規定があるんだ。総合的な探究の時間の履修をもって「課題研究」などの履修の一部または全部に替えることができるし、その逆もできるよ。
トモル
じゃあ好きなほうを選べばいいの?
ルミナ
そこは条件つきだよ。代替が可能なのは「同様の成果が期待できる場合」に限られるんだ。片方の成果が、もう片方の目標や内容から見て満足できるものかどうかを見て判断することになるね。
トモル
なるほど。ここまでで制度の形は分かったよ。よくある勘違いも教えてほしいな。
総合的な探究の時間でよくある誤解
ルミナ
現場でよく見かける3つを挙げるね。どれも解説を読むと答えが書いてあるよ。
トモル
1つ目は?
ルミナ
「内容が決まっていないから、何をやってもいい」という受け取り方だね。内容が明示されていないのは事実だけど、各学校が第1の目標を踏まえて目標と内容を定めることが求められているから、自由と無計画は別ものなんだ。
トモル
2つ目は?
ルミナ
「他教科と同じように内容を教える時間」という受け取り方かな。解説は、他教科等の目標及び内容との違いに十分留意した上で、他教科等で育成を目指す資質・能力との関連を重視することが大切だとしているよ。違いに留意する、が先に来ているんだ。
トモル
3つ目は?
ルミナ
「発表会の出来ばえで成立する」という考え方だね。単位の認定要件は、指導計画に従って学習活動を行ったことと、その成果が目標に照らして満足できると認められることの二つだよ。派手な発表があるかどうかではないんだ。
トモル
見え方より中身ってことか。
ルミナ
そう! 事例の読み方は探究学習の事例|文科省の手引きの中身と読み方でも触れているよ。じゃあ最後に、この時間がこれからどうなるかを見ておこう。
総合的な探究の時間はこれからどう変わる
トモル
制度って、また変わったりするの?
ルミナ
中央教育審議会の教育課程部会に「生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループ」が置かれていて、次の学習指導要領に向けた審議が続いているよ。ワーキンググループは、特定のテーマを話し合うために置かれた会議のことだね。
トモル
どんな話が出ているの?
ルミナ
2025年10月15日の第1回では、事務局から現行の整理として、小中学校での成果を生かしつつ、より探究的な活動を重視する観点から高校における名称を「総合的な探究の時間」として位置づけを見直したという説明があったよ。
トモル
高校の現場からの声もあった?
ルミナ
うん。高校の実践に関わる委員から、質の高い探究の充実や、学校教育目標と総合のカリキュラムとの関連、探究の質を高める授業改善の必要性を感じているという発言があったんだ。高校では教科・科目が細分化していて、教科と総合をどう往還させるかという課題も挙げられていたよ。
トモル
単位数とか目標が変わる話は出てるの?
ルミナ
第1回・第2回の議事録の範囲では、高校の単位数や目標の条文を変えるという結論は示されていないよ。2025年11月10日の第2回では、論点整理の内容として、小学校の総合的な学習の時間に情報の領域を付加し、高等学校については小中の系統性を踏まえて情報科の内容を充実する方向で検討する、という説明があったんだ。
トモル
高校の総合そのものというより、情報の話なんだね。
ルミナ
そうだね。どちらも審議中で、まだ決まったわけではないから注意してね。会議の中身は第1回のまとめと第2回のまとめで読めるよ。審議全体の論点は探究学習はこれからどう変わる?審議中の論点を解説にまとめてあるね。
トモル
今の制度を押さえておけば、変更があっても差分で追えそうだね。
総合的な探究の時間の要点
ルミナ
最後に、ここまでの中身を3行に圧縮しておくね。
トモル
名前だけ知っていた時間が、ちゃんと形のある制度だって分かったよ。
ルミナ
自校の全体計画と年間指導計画を開いて、目標・探究課題・具体的な資質・能力の3つがどう書かれているかを確かめるところから始めてみてね。気になった部分は、下の一次ソースから原文を読んでみて!