トモル

ねえルミナ、探究学習ってこれからどう変わるの?次の学習指導要領で大きく変わるって聞いたんだけど。

ルミナ

中央教育審議会でまさに審議中だよ。方向性は大きく3つ。探究という言葉の意味を定義し直す、小学校の総合に情報の領域(仮称)を加える、評価と計画づくりをシンプルにする。この3本柱だね!

トモル

えっ、探究の意味そのものが変わるの?それってけっこう大ごとじゃない?

ルミナ

そう、今回いちばん根っこの話なんだ。ただし全部まだ提案の段階で、決定ではないよ。会議の資料はどれも「〜としてはどうか」という書き方なの。そこは最初に押さえておいてね。

トモル

わかった。じゃあ、そもそもなんで今このタイミングで変わるの?

探究学習がこれから変わる理由と全体像

検討されている探究学習の3つの変化

ルミナ

出発点は2024年12月25日だよ。文部科学大臣が中央教育審議会に、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について諮問したんだ。ここから次の学習指導要領づくりが動き出したの。

トモル

諮問って、大臣が「考えてください」ってお願いすることだよね。

ルミナ

その通り!それを受けて教育課程企画特別部会が2025年1月から13回にわたって審議して、2025年9月19日に「論点整理」という検討のたたき台がまとまったんだ。9月25日には教育課程部会で了承されているよ。

トモル

なるほど。じゃあ探究の話は、その論点整理を受けて誰が詰めてるの?

ルミナ

「教育課程部会 生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループ」だよ。長い名前だけど、生活科と総合的な学習・探究の時間を担当する専門の会議だと思ってね。2025年10月15日の第1回から議論が続いているんだ。

トモル

どんな順番で話が進んでるの?

ルミナ

回ごとにテーマがはっきり分かれていて、追いかけやすいよ。表にしてみるね。

回次開催日主な議題
第1回2025年10月15日主な検討事項について(論点出し)
第2回2025年11月10日小学校における情報活用能力の育成(情報・技術WGとの合同)
第3回2025年12月26日総合の目標・内容の構造化等(前提となる諸論点の整理)、生活科の学びの本質的意義
第4回2026年1月27日生活科及び総合の目標・内容の構造化等
第5回2026年3月10日生活科におけるICT活用等、総合における評価等

トモル

論点出しから始まって、だんだん具体的になってきてるんだね。

ルミナ

そう。第1回で論点を広げて、第2回で情報、第3回で探究の考え方、第4回で目標の文言、第5回で評価。抽象から具体へ、きれいに階段を降りているんだ。第1回の中身は第1回のまとめでくわしく書いているよ。

トモル

じゃあ、その3つの変化を1つずつ教えて!まずは探究の意味からだね。

変化1 探究学習の「探究」の意味を定義し直す案

ルミナ

ここは第3回の議論だよ。まず現行の学習指導要領では、探究をどう説明しているか知ってる?

トモル

うーん、正直ちゃんと読んだことないかも…。

ルミナ

「問題解決的な学習が発展的に繰り返されていく」こと、そして「物事の本質を自己との関わりで探り見極めようとする一連の知的営み」と整理されているんだ。

トモル

うわ、たしかに難しい…!これを職員室で説明するのはしんどいかも。

ルミナ

それがまさに指摘されていた課題なんだ。第3回では、表現が抽象的で、各教科との関係も十分に整理されていないという指摘が事務局から示されたよ。そこで、教師や児童生徒にとって分かりやすい表現にするという観点から、新しい定義の案が出されたの。

トモル

どんな案なの?

ルミナ

探究とは「実社会・実生活との関わりの中で見出す自己の興味・関心や問題意識に基づき課題を設定し、教科等の学びを必要に応じて活用し、試行錯誤しながら、課題解決を通じた新たな価値の創造を繰り返していく学習のプロセス」という案だよ。

トモル

おお、長いけど言ってることは分かる気がする!「学習のプロセス」って言い切ってるのがすっきりしてるね。

ルミナ

そこが肝なんだ。探究を「特別な活動」ではなく「プロセス」として置き直している。この整理は第4回にも引き継がれて、総合の目標の書き方にも反映される案が示されたよ。

トモル

目標の文言まで変わるの?

ルミナ

案の段階だけどね。資質・能力の趣旨を「よりよく課題を発見・解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力」とすること、学習過程を「情報活用能力を効果的に発揮した探究を通して」と書くことが提案されたんだ。「課題」と「問題」で言葉が二つあると分かりにくいから、課題に一本化する案も出ているよ。

トモル

見方・考え方はどうなるの?

ルミナ

第4回で示された案は「実社会・実生活との関わりの中で見出す興味、関心や問題意識に基づく課題を横断的、総合的な視点から捉え、新たな価値を創造し、自分らしい生き方を問い続けること」だよ。現在より短く端的に示す方向で検討されているの。

トモル

あと、探究と「探究的な学び」って、なんとなく使い分けてるけど違うの?

ルミナ

いい質問!そこも今まで明確でなかったところなんだ。第3回では、課題・手続き・成果の3つの視点から、学習者が自分で決められる裁量の度合いでパターン分けして示す案が出されたよ。裁量が最も学習者に委ねられた形(パターン4)で、かつ課題が自分の興味・関心に基づき、手続きに試行錯誤があり、成果として新たな価値の創造を目指すものを「探究」と呼び、そこまで至らないパターン2・3を外形的に「探究的な学び」と位置づける整理だね。

トモル

じゃあ、子どもに全部任せたほうが探究として上等ってこと?

ルミナ

そこは資料にはっきり注記があるよ。学習者の裁量が広がるほど探究的な学びが深まるというものではない、安易な学習者任せにつながらないよう留意が必要、と書かれているんだ。ここは誤読されやすいから大事なポイント!

トモル

安心した。じゃあ「探究の質」の話はどうなってるの?

ルミナ

現行では「高度化」と「自律化」という2つの視点が示されているんだけど、要素が複雑で評価や振り返りの視点として使いづらいという指摘があったんだ。そこで第3回では、探究の質を「課題の質」「プロセスの質」「成果の質」の3つの視点で整理する案が示されたよ。

トモル

3つなら覚えられそう!課題の設定についても何か変わるの?

ルミナ

「課題」という言葉は困り事を想起させて、知りたい・やってみたいという好奇心からの探究が読み取りづらいという指摘があったんだ。だから、素朴な問いが「解明したい問い」と「解決したい課題」の間を行ったり来たりしながら洗練されていく、という考え方を参考資料の形で示す案が出ているよ。

トモル

一度決めたテーマを変えちゃダメ、って思い込んでる子は多いかも。

ルミナ

そこも触れられていて、一度設定した課題に拘泥する必要はないこと、子ども自身が洗練させていく過程での教師の指導性の発揮が重要だと示されているんだ。委員からも、プロセスは一方向ではなく行ったり来たりするのが当たり前だと強調してほしいという意見が出たよ。

トモル

探究の中身の話はよく分かった!次は情報の話だよね。

変化2 小学校の総合に「情報の領域(仮称)」を加える案

小学校の総合を2つの領域で構成する案

ルミナ

これは第2回の合同会議で議論されたテーマだよ。論点整理では、小学校は総合的な学習の時間に情報の領域を付加し、中学校には情報・技術科を新設し、高校は小中の系統性を踏まえて情報科の内容を充実させる方向が示されているんだ。

トモル

小学校だけ、なんで総合の中に入るの?教科じゃダメなの?

ルミナ

情報活用能力を探究的な学びを支え、駆動させる基盤と位置づけているからだよ。探究と情報を切り離さず、一体的に指導するという考え方なんだ。

トモル

じゃあ総合の時間の中身は、どんな形になるの?

ルミナ

第2回の資料では、総合を「探究の領域」と「情報の領域」の2つの領域で構成する案が示されたよ。そのうえで情報の領域は「ミニ探究ユニット」と「情報ブロック」の2つで組み立てる構想なんだ。

トモル

ミニ探究ユニット?かわいい名前だね。

ルミナ

探究のプロセスの中で情報活用能力の要素を学びながら使う小単元のことだよ。一方の情報ブロックは、情報技術に関する基礎的な内容を学ぶ小さなまとまり。ミニ探究ユニットとして位置づけるのが難しい内容は、独立した情報ブロックで学ぶという整理だね。

トモル

いつやるの?年度の最初にまとめて?

ルミナ

資料では1学期に集中して配置するイメージが示されているけど、季節を生かした地域学習をしている学校もあるから、通年で取り組む場合も十分考えられるとされているよ。ここは学校の実態次第だね。

トモル

総合が情報の授業になっちゃう心配はないの?

ルミナ

その心配は会議でも共有されていて、情報技術の学習自体が総合の目的だと誤解されないよう、情報の領域でも自己の生き方を考えるという探究の特質が十分に発揮されるようにする、という考え方が示されているんだ。ミニ探究ユニットがデジタル探究で、探究の領域がアナログ探究、といった誤解が生じないよう留意するという注意書きもあるよ。

トモル

そこまで書いてあるんだ。委員はどう受け止めてたの?

ルミナ

第3回では、各教科の学びを素振りや練習試合にたとえるなら総合での探究は本番だ、情報の領域で学んだことを自分の切実な問いのためにフル活用できる構造になっている、という意見が出たよ。第1回では、情報活用能力の指導が不足しているからこそ「活動あって学びなし」が起きるという指摘もあったんだ。

トモル

情報の領域の評価って、別に作るの?

ルミナ

第5回で委員から、情報の領域はあくまで総合の一部で探究を支える位置づけだから、別の評価の枠組みを作るのではなく総合全体の評価の中で扱う考え方でよいのではないか、という意見が出ているよ。ちょうど評価の話が出たから、3つ目の変化に進もう!

変化3 探究学習の評価と計画づくりを簡素にする案

トモル

待ってました。総合の評価、正直いちばんしんどいところなんだよね。

ルミナ

第5回のテーマがまさにそこだったよ。現行では3つの観点で評価して、総括的な評価は児童生徒にどのような力が身に付いたかを文章で端的に記述することになっているんだ。

トモル

でも実際は、単元ごとに細かい評価規準を作ってるよね。

ルミナ

そこが課題として挙げられたの。指導資料の例示では、目標の記載を細分化して10要素程度の評価規準を作り、指導の流れに沿って評価場面を割りつけて評価材料を集める運用が示されている。これが現場でできることの実態と乖離しているという指摘なんだ。

トモル

それ、めちゃくちゃ分かる…!で、どう変えようとしてるの?

ルミナ

改善の方向性の案はこんな内容だよ。文章で端的に記述するという基本は維持したうえで、総括的な評価のための細かな評価場面の設定や過度な評価材料の収集は求めないことにして、探究のプロセスを通じて一貫した視点で継続的に見取る形にしてはどうか、という提案だね。

トモル

見る回数を増やすんじゃなくて、ずっと同じ目線で見続けるってことか。

ルミナ

そういう考え方だね。評価の視点も、3観点を10の要素に分ける現行の扱いは過度な負担感につながるとして、よりシンプルにする案が出ているよ。単元計画に示す評価の視点は5要素程度で明示してはどうか、という提案もあるんだ。

トモル

子ども自身の振り返りはどうなるの?

ルミナ

教師による形成的な評価と、児童生徒自身による振り返り・自己評価・考えの共有や話合いを総合において一層重視する方向で整理してはどうか、と提案されているよ。委員からも、キャリア・パスポートと関連づけて自己評価する方法や、相互評価を総括的な評価に反映するには実践と研修の積み重ねが要るという意見が出たね。

トモル

計画づくりのほうは?全体計画って毎年けっこう重いんだよね。

ルミナ

そこも見直しの案が出ているよ。現状と案を並べてみるね。

項目現在の扱い検討されている案
探究の定義問題解決的な学習が発展的に繰り返されていくこと等課題設定から新たな価値の創造までの学習のプロセスとして再定義
探究の質高度化・自律化の2つの視点課題の質・プロセスの質・成果の質の3つの視点
小学校の総合探究の活動で構成探究の領域と情報の領域(仮称)の2領域で構成
評価3観点を細分化した評価規準を単元ごとに作成一貫した視点で継続的に見取り、視点は5要素程度
全体計画資質・能力の細分化、学習活動や評価計画も記載資質・能力は端的に記載、学習活動や評価は単元計画レベル

トモル

全体計画に評価計画を書かなくてよくなるかもしれないんだ!

ルミナ

全体計画への記載を必須としない案だね。評価計画が過度な評価材料集めを誘発しかねないという指摘を踏まえたものだよ。ただし、こうした見直しが指導の改善を妨げたり「活動あって学びなし」に陥ったりしないよう、詳細は別途検討して分かりやすい形で現場に示す、とも書かれているんだ。

トモル

負担は減らすけど中身は薄めない、ってことだね。ところで、これって結局いつから変わるの?

探究学習はいつからどう変わる?これからのスケジュール

ルミナ

現時点で議事録から確実に言えるのは、審議のゴール時期までだよ。順番に並べるね。

  1. 2024年12月25日、文部科学大臣が中央教育審議会に教育課程の基準等の在り方を諮問
  2. 2025年9月19日、教育課程企画特別部会が論点整理を取りまとめ、9月25日に教育課程部会で了承
  3. 2025年10月15日から、生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループで審議を開始
  4. 令和8年(2026年)春頃をめどに、標準授業時数の扱いについて別の部会で一定の結論
  5. 遅くとも令和8年(2026年)夏頃までに、各ワーキンググループが取りまとめ

トモル

2026年の夏に、このワーキンググループの結論が出るんだね。

ルミナ

そう。第1回の挨拶でも、令和8年度の夏頃までに審議のまとめを出す予定と説明されているよ。ちなみに第5回の最後には、次回を2026年4月15日に予定しているとアナウンスされたんだ。正式には後日連絡とされているけどね。

トモル

じゃあ、新しい学習指導要領が学校で始まるのはいつなの?

ルミナ

そこはこのワーキンググループの議事録では触れられていないんだ。取りまとめの時期までは示されているけれど、告示や実施の年度は今回の会議の記録からは分からない。だから「いつから変わる」を断言する情報には気をつけてね。

トモル

授業時数はどうなるの?総合が減ったりする?

ルミナ

情報の領域や情報・技術科ができると時数が増えるんじゃないかという論点はあって、諮問では年間の標準総授業時数を現在以上に増加させないという方針が前提として示されているんだ。そのうえで、教育課程全体を見通して教育課程企画特別部会と総則・評価特別部会で検討され、令和8年(2026年)春頃をめどに一定の結論を得るとされているよ。

トモル

つまり、総合の時数がどうなるかはこの会議の外で決まるんだ。

ルミナ

その通り。ここは混同しやすいから覚えておいてね。じゃあ、まだ決まっていないことをはっきりさせておこう!

まだ決まっていないこと

トモル

「〜としてはどうか」って、資料の言い回しなんだね。

ルミナ

そう。事務局が案を出して、委員が意見を述べて、それを踏まえて次の回で修正されていく。だから同じ論点でも回によって書きぶりが変わることがあるんだ。第3回の資料にも、この検討は学校現場の実践を特定の枠に当てはめるものではない、という注意が明記されているよ。

トモル

枠にはめるためじゃなくて、足場をつくるため、って感じか。

ルミナ

いい言い換え!資料でも、よりよい環境を目指すうえでの一定の足場をつくり、それを超えた現場の創意工夫による質の高い探究を実現していくことを目指すもの、と書かれているんだ。

トモル

じゃあ、その足場ができるまで先生は何をしておけばいいの?

これから何をしておけばいい?

ルミナ

大前提として、いま慌ててカリキュラムを変える必要はないよ。まだ何も確定していないからね。そのうえで、議論の方向とすでに重なっている実践はあるんだ。

トモル

たとえば?

ルミナ

1つ目は課題の設定。会議では、その課題が自分の生活や将来の生き方にとってどんな意味や魅力があるか、他者や社会や自然にとってどうか、という問いかけの視点が例として示されているよ。体験で好奇心を広げる、先輩や周囲の大人の取り組みに触れる、友達との対話で課題を高め合う、という裾野を広げる方策も挙げられているんだ。

トモル

なるほど、テーマ決めのときに使えそう!

ルミナ

2つ目は情報の扱い方だね。インターネットの情報を切り貼りするだけの事例や、探究のプロセスを形式的に回して学びが空洞化している事例が課題として挙げられている。集めた情報から自分の考えを組み立てる場面を単元の中に確保しておくのは、そのまま議論の方向と重なるよ。

トモル

3つ目は評価だよね?

ルミナ

そう。細かく点を取りに行く評価より、一人一人の探究を継続的に見取って伸びを捉える方向で議論が進んでいるから、振り返りの蓄積や自己評価・相互評価の場面を今から試しておくと、変化が来たときに慌てずにすむね。探究学習の基本そのものを確かめたい人は探究学習とは?も読んでみてね!

トモル

よし、なんとなく見通しが立ってきたよ。最後に3行にギュッとしてもらえる?

探究学習はこれからどう変わる?要点

ルミナ

どれも令和8年(2026年)夏頃の取りまとめに向けた審議中の内容だから、確定情報として扱わないでね。

トモル

「審議中」ってちゃんと言えるようになったのが、今日いちばんの収穫かも!

ルミナ

それが大事なんだ。気になった論点は、下の一次ソースから原文にあたってみてね。会議の資料も議事録も、誰でも読める形で公開されているよ!