トモル
ねえルミナ、「総合的な学習の時間」と「総合的な探究の時間」って、何が違うの?「探究学習」って言葉も聞くし、正直ごちゃごちゃなんだ。
ルミナ
総合的な学習の時間は小・中学校、総合的な探究の時間は高校の正式な名前だよ。平成30年告示の高校学習指導要領で名前が変わり、目標も「課題を解決」から「課題を発見し解決」へ一段上がったんだ。探究学習は一般的な呼び方だね!
トモル
えっ、じゃあ「探究学習」って正式な名前じゃないの?
ルミナ
そうなんだ。学習指導要領の解説を見ると、教育課程の基準上の名称は「総合的な学習の時間」と「総合的な探究の時間」の2つなんだよ。今日は、この名前の違いだけにしぼって見ていこう!
トモル
助かる!まずは言葉の地図がほしいな。
総合的な学習の時間と探究の違いは「学校段階」と「名前」

ルミナ
まずは、よく目にする言葉を一覧にしてみるね。どれが正式な名前で、どれが説明のための言葉なのかを分けるのがコツだよ。
| 言葉 | どこで使われる | 正体 |
|---|---|---|
| 総合的な学習の時間 | 小学校・中学校 | 教育課程上の正式な時間の名前 |
| 総合的な探究の時間 | 高等学校 | 教育課程上の正式な時間の名前(平成30年告示から) |
| 総合的な学習(探究)の時間 | 文部科学省のウェブページなど | 小中と高校をまとめて呼ぶときの表記 |
| 探究的な学習 | 小・中学校の解説 | この時間での学び方を説明する言葉 |
| 探究 | 高等学校の解説 | この時間での学び方を説明する言葉 |
| 探究学習 | 日常的な会話など | 一般的な呼び方(正式な時間の名前ではない) |
トモル
6つもあるんだ…!でも、正式な名前は上の2つだけなんだね。
ルミナ
そのとおり!高等学校学習指導要領解説によると、この時間は小学校第3学年から高等学校修了時までの教育課程に位置付けられてきたもので、高校だけが途中で名前を変えたんだ。
トモル
文部科学省のページの「総合的な学習(探究)の時間」って表記は?
ルミナ
小中と高校の両方をまとめて案内するページのタイトルとして使われている書き方だよ。正式名称が2つあるから、かっこでまとめているんだね。
トモル
なるほど。ところで、中身の違いは前に「探究学習とは」の記事で読んだ気がする。
ルミナ
うん、「課題と自分自身との関係」で比べる話は探究学習とは?定義とプロセスを一次資料で解説で紹介したよ。今日はそこから一歩進んで、名前が変わった経緯と、目標の文言が具体的にどう違うのかを見ていこう!
総合的な探究の時間に名前が変わったのはいつ?経緯を確認
トモル
そもそも、高校の名前はいつ変わったの?
ルミナ
流れを順番に並べるとこうなるよ。
- 平成28年(2016年)12月、中央教育審議会の答申で、高校の総合的な学習の時間の名称変更を含めた見直しが示される
- 平成29年(2017年)3月31日、小学校・中学校の学習指導要領が告示される(名称は「総合的な学習の時間」のまま)
- 平成30年(2018年)3月30日、高等学校の学習指導要領が告示され、名称が「総合的な探究の時間」になる
- 令和2年度(2020年度)に小学校、令和3年度(2021年度)に中学校で新しい学習指導要領が全面実施
- 令和4年度(2022年度)から、高等学校で年次進行により実施
トモル
答申では、どんなふうに書かれていたの?
ルミナ
高校の解説に答申の文章が引用されているよ。「名称を「総合的な探究の時間」などに変更することも含め位置付けを見直す」という一文があるんだ。
トモル
「など」ってついてるのが面白いね。最初から名前が決まっていたわけじゃないんだ。
ルミナ
そうだね。答申の段階では「など」を含んだ書き方で、告示で「総合的な探究の時間」に定まった流れだよ。
トモル
でも、なんで高校だけ変えたの?
ルミナ
解説は背景を3つ挙げているよ。一つは、高校生の時期は人間としての在り方を理念的に求め、それを進路実現や社会の一員としての生き方の中に具現しようとしていること。二つは、小中学校の総合的な学習の時間の学びが、それを具体化できる土台になっていること。三つは、この時間での学びが社会的に期待されていることなんだ。
トモル
小中で積み上げたものがあるから、高校で名前ごと一段上げたってことか。
ルミナ
まさに!解説では高校を初等中等教育の縦のつながりにおいて総仕上げを行う学校段階と位置づけているよ。じゃあ次は、名前だけじゃなく目標の言葉がどう変わったのかを見比べてみよう!
目標の文言で比べる総合的な学習の時間と探究の時間の違い

トモル
目標の文章って、そんなに違うの?
ルミナ
高校の解説には、両方の「第1の目標」を左右に並べた表が載っているんだ。総合的な学習の時間と総合的な探究の時間には共通性と連続性がある一方で、一部異なる特質が最も端的に表れているのは第1の目標だと書かれているよ。
トモル
じゃあ、並べて見せて!
| 比べる所 | 総合的な学習の時間(小・中) | 総合的な探究の時間(高校) |
|---|---|---|
| 見方・考え方 | 探究的な見方・考え方を働かせ | 探究の見方・考え方を働かせ |
| 課題への向き合い方 | よりよく課題を解決し | よりよく課題を発見し解決していく |
| 生き方との関係 | 自己の生き方を考えていく | 自己の在り方生き方を考えながら |
| 目標(1) 理解すること | 探究的な学習のよさを理解する | 探究の意義や価値を理解する |
| 目標(2) 問いの見いだし方 | 実社会や実生活の中から問いを見いだし | 実社会や実生活と自己との関わりから問いを見いだし |
| 目標(3) 目指す態度 | 積極的に社会に参画しようとする態度 | 新たな価値を創造し、よりよい社会を実現しようとする態度 |
トモル
おお、細かいけど確かに全部ちがう!
ルミナ
図の3か所は、表の上の3行にあたる目標の最初の一文の違いだよ。下の3行は育てたい資質・能力の(1)から(3)の違いだよ。「横断的・総合的な学習を行うことを通して」という部分は共通なんだ。
トモル
一番大きい違いはどこ?
ルミナ
「課題を解決」が「課題を発見し解決」になったところだね。高校の解説は、総合的な学習の時間を「課題を解決することで自己の生き方を考えていく学び」、総合的な探究の時間を「自己の在り方生き方と一体的で不可分な課題を自ら発見し、解決していくような学び」と説明しているよ。
トモル
「生き方」が「在り方生き方」になっているのも気になる。
ルミナ
解説は名称変更の背景として、高校生の時期を「人間としての在り方を理念的に希求し」、それを進路実現や社会の一員としての生き方の中に具現しようとする時期だと説明しているよ。問いの見いだし方も「実社会や実生活の中から」が「実社会や実生活と自己との関わりから」に変わっていて、高校では課題と自分とのつながりがより強く求められているんだ。
トモル
言葉を並べると、段階が上がっていく感じがよく分かるね。じゃあ表の1行目の「探究的な」と「探究の」は何が違うの?
「探究的な学習」と「探究」の違いは何か
ルミナ
ここが用語の中でいちばん混乱しやすいところだね!高校の解説には、はっきりこう書かれているよ。小中学校の総合的な学習の時間では「探究的な見方・考え方を働かせる」としているのに対して、総合的な探究の時間では「探究の見方・考え方を働かせる」としている、と。
トモル
「的な」がとれただけ?
ルミナ
文字の上ではそうなんだけど、呼び方がそろえて変わっているんだ。小学校の解説では、問題解決的な活動が発展的に繰り返されていくことを「探究的な学習」と呼んでいるよ。高校の解説では、問題解決的な学習が発展的に繰り返されていくことを「探究」と呼んでいるんだ。
| 項目 | 小・中学校 | 高等学校 |
|---|---|---|
| 学び方の呼び名 | 探究的な学習 | 探究 |
| 目標で働かせるもの | 探究的な見方・考え方 | 探究の見方・考え方 |
| 学習の過程の呼び名 | 探究的な学習の過程 | 探究の過程 |
| 解説での位置づけ | 探究的な学習の過程を本質と捉え中心に据える | 探究の過程を本質と捉え中心に据える |
トモル
どちらも「過程が本質」という点は同じなんだね。
ルミナ
そう!小学校の解説は、探究的な学習を「物事の本質を探って見極めようとする一連の知的営み」とも説明しているよ。やっていることの骨組みは共通で、呼び名が学校段階に合わせて変わっているんだ。
トモル
じゃあ「探究学習」は、どっちの意味なの?
ルミナ
そこが落とし穴なんだ。「探究学習」は学習指導要領上の時間の名前ではないから、使う人によって指すものが変わるんだよ。次は、こういう言葉の混同から生まれやすい誤解を見ていこう!
探究学習と総合学習は同じ?よくある誤解
トモル
「探究学習」と「総合学習」って、結局同じものだと思っていいの?
ルミナ
会話では同じ時間を指して使われることもあるけど、どちらも正式な名前ではないんだ。書類や計画に書くときは、学校段階に合わせて正式な名前を使うのが安全だよ。
トモル
誤解2はびっくり!科目の名前にも「探究」が入っているんだ。
ルミナ
高校の解説は、総合的な探究の時間の探究が他の教科・科目の探究と違う点を3つ挙げているよ。対象が特定の教科・科目にとどまらず横断的・総合的であること。複数の教科・科目の見方・考え方を総合的・統合的に働かせること。そして、唯一の正解が存在しない課題に対して、最適解や納得解を見いだすことを重視していることなんだ。
トモル
科目の探究は、その教科の理解を深めるための探究ってことか。
ルミナ
そう!解説には、実社会や実生活の課題を探究する総合的な探究の時間と、教科の系統の中で行われる探究の両方が充実することが、豊かな教育課程の実現につながると書かれているよ。どちらが上という話ではないんだ。
トモル
誤解3の学校独自の名前も、よくあるよね。
ルミナ
小学校と高校の解説のどちらにも、教育課程の基準上の名称は決まっているけれど、時間割上の具体的な名称は各学校で定めるとあるよ。例えば地域のシンボルや学校教育目標、保護者や地域の人々の願いに関連した名前にして、この時間の趣旨が広く理解されるようにすればよい、という説明なんだ。
トモル
名前がバラバラでも、中身は同じ時間なんだね。安心した!じゃあ、この用語はこれからも変わらないの?
総合的な学習の時間と探究の用語はこれからどうなる?
ルミナ
2025年12月の第3回時点では、中央教育審議会の「生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループ」で、次の学習指導要領に向けた審議が続いていたよ。ワーキンググループは、特定のテーマを話し合うために置かれた会議のことだね。
トモル
用語の話も出ているの?
ルミナ
2025年12月26日の第3回では、事務局から「探究」と「探究的な学び」の違いについての整理案が示されたんだ。議事録では、総合と各教科における探究の違いや「探究」と「探究的な学び」との違いについて、必ずしもこれまで明確に整理されてこなかったと説明されているよ。
トモル
おお、まさに今日のテーマだ!どんな案なの?
ルミナ
課題・手続き・成果の3つの視点から、学習者が自分で決められる度合いに応じてパターン分けし、条件を満たすものを「探究」として用語を整理してはどうか、という提案だよ。ただし、これは第3回時点で審議中の案で、まだ決まっていないから注意してね。
トモル
審議の中身をもっと知りたいときは?
ルミナ
探究の定義を見直す案などは探究学習はこれからどう変わる?審議中の論点を解説で詳しく紹介しているよ。会議の初回の様子は第1回のまとめから読めるんだ!
総合的な学習の時間と探究の違いの要点
トモル
名前の違いが分かると、資料を読むときに迷わなくなりそう!
ルミナ
言葉がそろうと、小中高で同じ話をしているのか、違う段階の話をしているのかが見えてくるよ。気になった部分は、下の一次ソースから解説の原文を読んでみてね!