トモル

ねえルミナ、探究学習の評価ってどうすればいいの?テストもないし、何を見て、何を書けばいいのか全然わからなくて。

ルミナ

探究学習の評価は、点数をつける仕事ではなく、一人一人の姿を文章で書き残す仕事だよ。総合的な学習・探究の時間には評定がなく、指導要録にはその子のよさや成長などの顕著な事項を文章で書く。ここが出発点なんだ!

トモル

えっ、評定つけないの?

ルミナ

つけないの。そのかわり、評価の観点も評価規準も国ではなく各学校が決めるから、「作り方」を知らないと手が止まるんだよね。

トモル

それだ…。うちの学校、毎年フォーマットを引き継いでるだけかも。

ルミナ

大丈夫、順番に見ていこう。しくみ、観点、規準のつくり方、方法、指導要録、そして見直しの動きまで一本でつなぐね!

探究学習の評価が各教科と違う3つのしくみ

各教科の評価と総合的な学習・探究の時間の評価の違いを対比した図

ルミナ

まず土台から。ここを外して教科のやり方をそのまま持ち込むと、いちばん苦しくなるんだ。

トモル

心当たりしかない。

ルミナ

違いは3つだよ。観点を誰が決めるか、評定をつけるか、記録が数値か文章か。

項目各教科総合的な学習・探究の時間
評価の観点国が3観点に整理して示し、設置者がこれに基づいて設定各学校が自校の目標と内容に基づいて設定
評定つけるつけない
指導要録の記録観点別学習状況と評定を記号で記入顕著な事項を文章で記述

トモル

「観点を学校が決める」って、そんな大きな話だったんだ。

ルミナ

高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説の総合的な探究の時間編には、学習指導要領が定める目標を踏まえて各学校が目標や内容を設定するという特質から考えると、各学校が観点を設定するという枠組みは維持する必要があると書かれているよ。

トモル

国が「これで評価してね」って表をくれるわけじゃないのか…。

ルミナ

そう。だから探究学習の評価は「配られたものを埋める」んじゃなくて「自分たちで組み立てる」作業なの。しんどさの正体はここにあるんだよね。

トモル

逆にいえば、組み立て方さえ分かれば楽になるってこと?

ルミナ

そのとおり!まずは観点の話からいこう。

探究学習の評価の観点は3観点で見る

ルミナ

観点を決めるのは学校だけど、手ぶらで決めるわけじゃないよ。

トモル

よかった…!

ルミナ

平成31年3月29日付の「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」で、観点別学習状況の評価の観点が「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理されたんだ。

トモル

それ、教科の話じゃないの?

ルミナ

総合も同じ整理だよ。国立教育政策研究所の「指導と評価の一体化」のための学習評価に関する参考資料(中学校 総合的な学習の時間)には、各学校が観点を設定するという枠組みが維持されているが、指導と評価の一体化を推進するためにも、評価の観点をこの3観点に整理し示した、と書かれているの。

観点総合・探究で見ているもの
知識・技能他教科等と総合で習得した知識・技能が関連付けられ、社会の中で生きて働くものになっているか
思考・判断・表現課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現の過程で発揮され、未知の状況で活用できるものになっているか
主体的に学習に取り組む態度自分自身に関すること、他者や社会との関わりに関することの両方の視点から見た学びに向かう姿

トモル

この「知識・技能」がむずかしいんだよ…。探究って、子どもによって調べる中身が違うのに。

ルミナ

その悩み、国の会議でもそのまま出ているよ。生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループの第4回(2026年1月27日開催)では、探究活動でも知識・技能は扱われるけれど、それは児童生徒自身が設定した課題を探究する中で必要に応じて引き出したり獲得したりする性質のものだから、事前に探究活動で知識・技能の目標を設定するのはかなり難しいという意見が委員から出たんだ。

トモル

やっぱり!先生の感覚が変なわけじゃなかったんだ。

ルミナ

変じゃないよ。ただし現行の制度は3観点で動いているから、今日のところは3観点を前提に規準づくりの手順を押さえよう。

トモル

規準…「きじゅん」って、あの表のこと?

探究学習の評価規準は各学校がこう作る

学校の目標と内容から文末を変えて単元の評価規準をつくる3ステップの図

ルミナ

そう、その表のこと。ここが探究学習の評価でいちばん実務的なところだよ。

トモル

正直、毎回ゼロから文章をひねり出してる…。

ルミナ

ひねり出さなくていいんだ!高校の解説には、総合的な探究の時間の目標や内容を各学校が設定する際に、年間や単元を通してどのような資質・能力を育成することを目指すかを設定するから、評価規準については、年間や単元を通して育成したい資質・能力をそのまま当てはめることができると書かれているよ。

トモル

えっ、そのまま使えるの?

ルミナ

使えるの。国立教育政策研究所の参考資料は、その手順をもっと具体的に示しているよ。

  1. 各学校において定めた総合の目標と、「評価の観点及びその趣旨」を確認する
  2. 各学校において定めた内容の記述、つまり探究課題ごとに作った「探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力」が、観点ごとにどう整理されているかを確認する
  3. 観点ごとのポイントを踏まえて、内容のまとまりごとの評価規準を作成する
  4. その評価規準をもとに、単元の学習活動から目指すべき生徒の姿を想定して、単元の評価規準を作成する

トモル

3の「観点ごとのポイント」って何?

ルミナ

文末を変えるだけだよ。「理解する」を「理解している」に、「できる」を「している」に、「しようとする」を「しようとしている」に変える。これで内容のまとまりに対応する評価規準になる、と参考資料に書かれているんだ。

トモル

それだけ!?会議で3時間かけて文言を練ってた…。

ルミナ

練るのは、そのあとの「単元の評価規準」のほうだね。単元でどんな学習活動をして、どの資質・能力を重視するかによって具体的に書く。参考資料には、指導計画に位置付けるときは生徒の姿となって表れやすい場面、全ての生徒を見取りやすい場面を選定することが大切だとあるよ。

トモル

全員を見取れる場面か。それ、選ぶ発想がなかった。

ルミナ

大事なところ!じゃあ、その場面で何をどう見るかにいこう。

探究学習の評価方法は1つに絞らない

ルミナ

高校の解説は、探究の学習状況の評価の方法について、信頼される評価であること、多面的な評価であること、学習状況の過程を評価する方法であること、の3つが重要だと示しているよ。

トモル

「多面的」って、要するにいろんな方法を使えってこと?

ルミナ

そう。解説には具体的な方法が並べて示されているんだ。

評価の方法中身
表現による評価プレゼンテーションやポスター発表、総合芸術など
言語活動の記録による評価討論や質疑の様子など
観察記録による評価学習や活動の状況など
制作物・ポートフォリオによる評価論文・報告書、レポート、ノート、作品などを計画的に集積したもの
記述テストによる評価課題設定や課題解決能力をみるような記述テスト
自己評価・相互評価評価カードや学習記録など
第三者評価保護者や地域社会の人々等による評価

トモル

7つもある!全部やらなきゃだめ?

ルミナ

全部は無理だよね。解説が言っているのは、いずれの方法も資質・能力を育てることができているかどうかを見ることが目的だ、ということ。目的が同じなら、単元に合うものを選べばいいの。

トモル

ルーブリックは?この表にないけど。

ルミナ

ルーブリックは評価方法そのものというより、見取る物差しを言葉にしたものだね。会議でも扱われていて、教師と生徒のコミュニケーションツールだという意見や、ルーブリックを使うことが目的になってはならないという意見が出ているよ。ポートフォリオやルーブリックの心構えは探究学習で大事なことは?で掘り下げているから、そちらも見てね。

トモル

分かった。で、集めたものを最後にどこへ書くんだっけ。

指導要録に探究学習の評価をどう書くか

ルミナ

ここが年度末の関門だね。総合の指導要録は、教科とはまったく形が違うよ。

トモル

どう違うの?

ルミナ

国立教育政策研究所の参考資料には、指導要録はこれまでどおり、実施した「学習活動」「評価の観点」「評価」の三つの欄で構成し、その生徒のよさや成長の様子など顕著な事項を文章で記述することが考えられる、と書かれているんだ。

トモル

3つの欄…!観点ごとにA・B・Cを並べるんじゃないんだ。

ルミナ

並べないの。高校の解説にも、教科のように数値的に評価することはせず、活動や学習の過程、報告書や作品、発表や討論などに見られる学習の状況や成果などについて、生徒のよい点、学習に対する意欲や態度、進歩の状況などを踏まえて適切に評価すると示されているよ。

トモル

じゃあ全部を書き残さなきゃ…。

ルミナ

そこは逆だよ!解説が言っているのは、各学校が定めた観点のうち、学習状況に顕著な事項がある場合などにその特徴を記入するということ。全観点を毎年フルセットで埋める設計ではないの。

トモル

えっ、そうなんだ。ずっと全部埋めようとしてた…。

ルミナ

埋めようとするから記録が膨らむんだよね。ちなみに高校では、総合的な探究の時間の目標からみて満足できると認められる場合に単位を修得したことを認定することになっていて、解説では担当者で単位の認定にかかわる会議をもち、校長が単位を認定することが考えられる、と示されているよ。

トモル

文章記述と単位認定は別ものなんだね。

ルミナ

別ものだね。ここまでが現行のしくみ。次は、つまずきやすいところを見ておこう。

探究学習の評価でよくある3つの失敗

ルミナ

どれも一次資料の中に、はっきり「それは違う」と書かれているものだよ。

トモル

耳が痛い予感がする…。

トモル

3つ目、まさにそれ。毎時間チェック表を配ってた。

ルミナ

平成31年の通知にも、観点別学習状況の評価の記録に用いる評価は、毎回の授業ではなく原則として単元や題材など内容や時間のまとまりごとに、それぞれの実現状況を把握できる段階で行うなど、その場面を精選することが重要だとあるよ。

トモル

精選…減らしていいって、国が言ってるんだ。

ルミナ

言っているよ!あともう1つ。通知には、観点別学習状況の評価になじまず個人内評価の対象となるものは、児童生徒が学習したことの意義や価値を実感できるよう、日々の教育活動等の中で児童生徒に伝えることが重要だとも書かれているんだ。

トモル

記録に残さなくても、その場で本人に返すことが評価なんだね。

ルミナ

そこが探究の評価の芯だと思う。じゃあ最後に、このしくみ自体が今どう議論されているかを見よう。

探究学習の評価はこれからどう変わるのか

ルミナ

生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループの第5回(2026年3月10日開催)で、評価が正面から議題になったんだ。

トモル

どんな話が出たの?

ルミナ

事務局から、現行は各学校で観点を定めて単元ごとに観点別の評価規準を作り、評価場面を設定して評価材料を収集し、年度末の総括的な評価に生かす運用を指導資料で例示しているけれど、現場の実感との間に乖離があるという指摘がある、と説明があったよ。

トモル

乖離…はっきり言ってくれたんだ。

ルミナ

そのうえで改善の方向性として、目標に照らして一人一人の成長に着目して評価しつつ、総括的な評価のための細かな評価場面の設定や過度な評価材料の収集は求めないこととし、探究のプロセスを通じて一貫した視点で継続的に見取ることとしてはどうか、という提案が示されたんだ。

トモル

材料集めを求めない…!

ルミナ

あわせて、3観点を10の要素・視点に分けた評価規準を作る現行の取扱いは過度な負担感につながるとして、よりシンプルにしてはどうかという提案も出ているよ。単元計画に示す評価については、目標に照らした視点を5要素程度で明示してはどうか、という案だね。

トモル

10から5に。半分だ。

ルミナ

委員からも、探究の学習プロセスを進めることで精いっぱいで評価まで手が回っていない学校が特に中学校では多い、という指摘や、評定だけが評価ではないし、生徒の目に直接触れることがない指導要録の記述だけが評価ではない、という意見が出ているの。

トモル

これ、もう決まったの?

ルミナ

まだ決まっていないよ。第5回時点では事務局の提案に対して意見を出し合う段階で、評価の在り方の詳細については別途検討のうえ分かりやすい形で現場に示すこととしてはどうか、とされている。だから今日は現行のしくみを軸に説明したんだ。

トモル

提案を「もう変わった」と読んじゃいけないんだね。

ルミナ

そこは慎重にね。見直し全体の流れは探究学習はこれからどう変わる?に、会議の出発点は第1回のまとめ第2回のまとめにまとめてあるよ。

トモル

最後に、今日の話を短くお願い!

探究学習の評価の要点

ルミナ

この3行だけ持ち帰ってくれれば十分だよ!

トモル

明日からできることって、ある?

ルミナ

今の単元の評価計画を開いて、全員を見取れる場面がどこかに印をつけてみて。印がつかない評価場面は、たぶん記録のための記録になっているから。

トモル

それならすぐできる。ありがとう!