トモル
ねえルミナ、うちの子が学校で「探究学習」ってのをやってるらしいんだけど、保護者としては何をすればいいの?宿題みたいに手伝うものなの?
ルミナ
結論から言うと、保護者がやることは「教える」ことではなく、子どもの疑問を聞いて一緒に広げ、必要なら地域の人や場所につなぐことだよ。文部科学省の学習指導要領の解説にも、学校が「家庭や地域と連携・協働しながら」探究の時間を進めると書かれているんだ!
トモル
えっ、教えなくていいの?
ルミナ
うん。むしろ、答えを先に渡してしまうと探究の出発点がなくなっちゃうの。その理由も含めて、学校で何をしているのか、家庭で何ができるのか、順番に見ていこう!
探究学習で学校は何をしているのか
トモル
そもそも学校の「探究学習」って、何の時間なの?教科書もないみたいだし。
ルミナ
小学校と中学校では「総合的な学習の時間」、高校では「総合的な探究の時間」という時間に行われているよ。文部科学省の小学校学習指導要領解説では、探究的な学習を「物事の本質を探って見極めようとする一連の知的営み」と説明しているんだ。
トモル
知的営み…。むずかしい言葉だね。
ルミナ
言い換えると、「なんでだろう?」を自分で見つけて、調べて、考えて、人に伝える、という流れを繰り返す学習だね。解説には4つの過程が示されているよ。
| 過程 | 子どもがしていること(解説の記述より) |
|---|---|
| 課題の設定 | 日常生活や社会に目を向けたときに湧き上がる疑問や関心から、自分で課題を見つける |
| 情報の収集 | その課題にある具体的な問題について情報を集める |
| 整理・分析 | 集めた情報を整理・分析したり、知識や技能に結び付けたり、考えを出し合ったりする |
| まとめ・表現 | 明らかになった考えや意見をまとめ、表現する。そこからまた新しい課題を見つける |
トモル
出発点が「自分の疑問」なんだ。先生が問題を出すんじゃなくて。
ルミナ
そう!ここが保護者にとっていちばん大事なポイント。解説では、探究のテーマになる現代社会の課題は「正解や答えが一つに定まっているものではなく」、従来の教科の枠組みでは扱いにくいものだと説明されているの。だから、ドリルのように答え合わせをする学習ではないんだよ。
トモル
なるほど。じゃあ、授業ではどんな活動をしてるの?
ルミナ
学習指導要領の第5章には、自然体験やボランティア活動などの社会体験、ものづくり、観察・実験、見学や調査、発表や討論などの学習活動を積極的に取り入れること、と書かれているよ。教室の外に出て、地域の人に話を聞いたり、調べたことを発表会で伝えたりする活動が多いのはそのためなんだ。
トモル
だから子どもが「今度、商店街の人にインタビューする」とか言ってたのか!
ルミナ
そういうこと。もっと詳しい定義や総合との違いは探究学習とは?定義とプロセスを一次資料で解説で説明しているから、まずは全体像を知りたい人はそちらも見てね。高校の「総合的な探究の時間」については総合的な探究の時間とは?高校の目標・単位数を解説があるよ。次は、保護者が学習指導要領の中でどう位置づけられているかを見ていこう。
探究学習で保護者に期待されていること

トモル
学習指導要領って先生向けのものだよね?保護者のことなんて書いてあるの?
ルミナ
書いてあるよ。まず学習指導要領の総則、つまり全教科に共通する総合的な決まりの部分に、学校は教育課程の編成についての基本的な方針が「家庭や地域とも共有されるよう努める」と書かれているの。学校が何を目指して探究の時間をやっているのか、家庭に伝える努力をする、ということだね。
トモル
じゃあ、学校だよりや説明会でそういう話が出てくるのは、そのためなんだ。
ルミナ
そう。そして「総合的な学習の時間」の解説には、もっと直接的な記述があるよ。総合的な学習の時間は「保護者をはじめ地域の専門家など外部の人々の協力が欠かせない」とされていて、「社会に開かれた教育課程」という考え方のもと、学校と保護者とが育成を目指す資質・能力について共有し、必要な協力を求めることも大事だ、と書かれているの。
トモル
「協力を求める」って、具体的には何をお願いされるの?
ルミナ
解説に出てくる場面を並べると、こんな感じ。
| 場面 | 解説に書かれていること |
|---|---|
| 学習の出発点 | 子どもの関心や疑問を把握するため、日常の語りやつぶやき、日記、保護者から寄せられた子どもの様子などの資料を集める |
| 体験活動 | 体験活動を家庭や地域社会と連携しつつ体系的・継続的に実施できるよう工夫する |
| 人や場所の協力 | 教育活動に必要な人的・物的な体制を、家庭や地域の人々の協力を得ながら整える |
| 成果の発表 | 学校公開日や学習発表会の開催を通知し、保護者や地域の人々に成果を発表する場と機会を設ける |
| 評価 | 学習の状況や成果を外部に公表し、保護者をはじめ地域の人々からの評価も得て、その後の実践に生かす |
トモル
えっ、「保護者から寄せられた子どもの様子」が、学習の出発点になるの?
ルミナ
なるんだよ。解説では、子どもの関心や疑問は本人が全部を自覚しているとは限らず、言葉にできていないことも多い、だから先生は丁寧に見取って把握する必要がある、と説明しているの。その手がかりの一つとして、保護者から伝えられる家での様子が挙げられているんだ。
トモル
家で「なんで空は青いの?」とか言ってるのを先生に伝えるだけでも、役に立つってこと?
ルミナ
その通り!そして発表の場面も大事。解説には、学習の成果を保護者も含めた地域の人々に公開することで、子どもが社会の一員であることを自覚したり、学習意欲が向上したりすると書かれているよ。発表会を見に行って感想を伝えることも、立派な関わり方なんだ。
トモル
見に行くだけでいいなら、できそう。
ルミナ
中学校の解説にも、小学校とほぼ同じ文で「保護者をはじめ地域の専門家など外部の人々の協力が欠かせない」と書かれているから、小学生でも中学生でも考え方は同じだよ。じゃあ次は、家庭で実際に何ができるかを3つにしぼって見ていこう!
探究学習で家庭でできること3つ

トモル
で、結局うちでは何をすればいいの?
ルミナ
学習指導要領と解説の記述をもとに、家庭での関わり方を3つにしたよ。先に言っておくと、この3つは国が「保護者はこうしなさい」と決めたものではなくて、解説の記述を家庭に置き換えて読んだ一例だと思ってね。
- 答えを与えない。子どもの「なんで?」に対して、すぐに正解を渡さず「どう思う?」と聞き返す
- 問いを一緒に広げる。「それって他のものでも同じかな?」「誰に聞いたら分かりそう?」と、疑問を次の疑問につなげる会話をする
- 地域の人や場所につなぐ。図書館・博物館・公民館や、親戚・知り合いの中で、その疑問に答えてくれそうな人や場所を一緒に探す
トモル
1つ目の「答えを与えない」って、なんで?知ってることなら教えたほうが早いじゃん。
ルミナ
探究の出発点が「本人にとって切実な疑問」だからだよ。解説には、主体的で粘り強い探究を生み出すにはその出発点である子どもの関心や疑問が本人にとって切実なものであることが重要と書かれているの。大人が先に答えを言ってしまうと、その疑問は「もう解決したこと」になって、調べる理由が消えちゃうんだ。
トモル
たしかに、答えを聞いたら、そこで終わりだもんね。
ルミナ
しかも探究で扱う現代社会の課題は、さっき見たように「正解や答えが一つに定まっているものではない」。だから大人の答えも、一つの意見にすぎないんだよね。
トモル
2つ目の「問いを一緒に広げる」は?
ルミナ
解説に、先生が子どもと会話する場面の話があるの。日常の何げない機会をとらえて丁寧に会話する中で、子どもが自分の考えや思いを語り、無自覚だった関心や疑問を自分で自覚することもある、という記述だよ。これは先生向けの文だけど、家庭での会話にもそのまま当てはまると思うんだ。
トモル
自分でも気づいてなかった疑問に、話してるうちに気づくってことか。
ルミナ
そう!だから「それ、面白いね。どうしてそう思ったの?」と聞くだけで、子どもの中で問いが育っていくの。問いの立て方そのものについては探究学習の問いの立て方|テーマを問いに変える4ステップに詳しく書いてあるよ。
トモル
3つ目の「地域につなぐ」は、保護者がやることなの?学校の仕事じゃなくて?
ルミナ
基本は学校が整えるものだよ。学習指導要領の総則には、教育活動に必要な人的・物的な体制を「家庭や地域の人々の協力を得ながら整える」とあって、第5章には学校図書館のほか、公民館、図書館、博物館などの社会教育施設との連携や、地域の教材や学習環境の積極的な活用を工夫すること、と書かれているの。
トモル
じゃあ、保護者は「協力を得られる側」なんだね。
ルミナ
そう。解説には、学校が協力してくれる人材や施設のリスト、いわゆる人材・施設バンクを作る工夫も紹介されているの。だから「うちの親戚に漁師がいる」「近所に昔の町の写真を持っている人がいる」といった情報を学校に伝えるだけでも、立派な協力になるんだ。もちろん、休みの日に子どもと図書館や博物館に行くのも、解説に書かれた「社会教育施設」を家庭から使うことになるよ。
トモル
3つとも、特別なスキルはいらないんだね。
ルミナ
いらないよ!ただ、よかれと思ってやりがちな関わり方で、探究の邪魔になってしまうこともあるの。次はそこを確認しておこう。
探究学習の保護者サポートでやりがちな誤解
トモル
邪魔になる関わり方って、たとえば?
ルミナ
いちばん多いのは、「ちゃんとした成果物を作らせなきゃ」と大人が仕上げてしまうことだと思う。解説にある探究の姿は、「見方が広がったことを喜び、更なる学習への意欲を高める」「学んだことを自己と結び付けて、自分の成長を自覚したり自己の生き方を考えたりする」というものなの。立派なポスターを作ることが目的ではないんだよね。
トモル
3つ目、気になる。探究って、受験に効くとかよく聞くけど。
ルミナ
正直に言うね。小学校の解説には、全国学力・学習状況調査の分析で、探究のプロセスを意識した学習活動に取り組んでいる児童生徒ほど各教科の正答率が高い傾向がある、という記述はあるの。でもこれは「傾向がある」という話で、家庭で保護者がこう関わると成績が上がる、とはどこにも書かれていない。だから、そこを売り文句にはしないよ。
トモル
効果を言い切らないのは、ちょっと物足りないけど、誠実だね。
ルミナ
探究の価値は、解説が書いているように「自己の生き方を考えていく」ところにあるからね。保護者が「成績に効くから」と期待しすぎると、1つ目の「答えを与えない」が守れなくなりやすいんだ。評価の仕組みそのものは探究学習の評価はどうする?観点と規準の作り方で詳しく書いているよ。
トモル
じゃあ、親としては「成績」じゃなくて「どんな疑問を持ったか」を見ればいいんだね。
ルミナ
その通り!では最後に、この探究学習がこれからどう変わろうとしているのか、保護者が知っておきたいことを見ておこう。
探究学習はこれからどう変わる?保護者が知っておくこと
トモル
探究学習って、今のままずっと続くの?
ルミナ
今、文部科学省の中央教育審議会というところで、次の学習指導要領に向けた見直しが進んでいるんだ。「生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループ」という会議で、2025年10月15日の第1回から議論が続いているよ。ただし、すべて審議中で、まだ何も決まっていない。ここは正確に覚えておいてね。
トモル
保護者に関係する話も出てるの?
ルミナ
出ているよ。2025年12月26日の第3回では、委員から、探究の学びの在り方や意義を地域や保護者、家庭と共有して共感を得ることが今後必要だ、という意見が出たの。別の委員からは、資料の文言に家庭教育や家庭からの働きかけが入っていないのが気になる、という指摘もあったんだ。
トモル
家庭をもっと巻き込もう、という方向なんだね。
ルミナ
そう読めるね。2026年3月10日の第5回でも、委員から、学校が探究の全体計画を作るときに生徒の実態や保護者の願い、地域の願いが非常に重要になるので、解説にその辺りも含めて書いてほしい、という意見が出ているよ。
トモル
「保護者の願い」が計画の材料になるんだ。
ルミナ
今の小学校の解説にも、全体計画の例として「児童の成長に寄せる保護者の願い」という項目は載っているの。それを次の解説でも大事にしてほしい、という文脈だね。繰り返しになるけど、これらは委員の意見であって、決定事項ではないよ。
トモル
審議の中身をもっと知りたいときは、どこを見ればいい?
ルミナ
全体の流れは探究学習はこれからどう変わる?審議中の論点を解説にまとめてあるよ。各回の議事録は文部科学省のサイトで全文が公開されているから、記事の最後にリンクを置いておくね。
トモル
今日の話、だいぶ整理できたよ。最後にもう一回、要点を教えて!
ルミナ
いいよ。この記事で伝えたかったことは、この3行に尽きるよ。
トモル
ありがとう、ルミナ!今夜、子どもの「なんで?」を聞いてみる。
ルミナ
うん、答えを言いたくなっても、まずは「どう思う?」からね!正確な内容は、下の一次ソースで必ず原文を確認してほしいな。