トモル
ねえルミナ、探究のテーマは決まったんだけど、「問いを立てよう」って言われると手が止まるんだ。探究学習の問いの立て方って、何から始めればいいの?
ルミナ
探究学習の問いの立て方は、関心を言葉にする→対象と範囲を絞る→問いの形にする→確かめられるか点検するの4ステップで考えると進めやすいよ。文部科学省の解説と手引に、その手がかりが書かれているんだ!
トモル
4ステップ! テーマが決まっていれば、あとは「〜について調べよう」で十分だと思ってた。
ルミナ
そこが分かれ目なんだ。「〜について」のままだと、何を集めて何が分かれば終わりなのかが決まらない。高等学校の解説は、洗練された課題が生徒が自らの力で探究を進めるための原動力となるリサーチクエスチョンになる、と書いているの。
トモル
リサーチクエスチョン…研究の問い、ってことだよね。
ルミナ
そう。ここでは、調べたり確かめたりする対象がはっきりした問い、くらいに捉えておけば大丈夫。テーマの選び方そのものは探究学習のテーマの決め方で扱っているから、ここでは「決まったテーマを、確かめられる問いに変える」ところに絞って見ていこう!
探究学習の問いの立て方は4ステップで考える

トモル
まず全体像を見せて。4つのステップは、文部科学省がそう決めているの?
ルミナ
ううん、4ステップという区切りはこの記事で一次資料の記述を並べ直したものなんだ。学習指導要領の解説が「この4段階で問いを立てなさい」と定めているわけではないよ。ただ、どのステップにも根拠になる記述があるから、表で見てね。
| ステップ | やること | 一次資料の手がかり |
|---|---|---|
| 1 関心を言葉にする | 気になること・違和感を書き出す | 手引の「問いの顕在化」、ウェビング |
| 2 対象と範囲を絞る | 広い関心を一つの対象に焦点化する | 手引の「鋭角性」、問題の序列化 |
| 3 問いの形にする | リサーチクエスチョンと仮説を立てる | 手引の単元例「リサーチクエスチョンと仮説を立て」 |
| 4 確かめられるか点検 | 目的と方法に矛盾がないかを見る | 解説・手引の「整合性」、小学校解説の「見通し」 |
トモル
図の矢印が、最後から2番目に戻ってるのはなんで?
ルミナ
一度で完成しないからだよ。高等学校の解説には、探究のプロセスが繰り返される中ではじめに立てた問いや課題そのものが問い直されて、その質や精度が高まっていくとあるの。点検して直す、を何度か往復する前提で読んでね。
トモル
なるほど、一発勝負じゃないんだね。じゃあ最初のステップからお願い!
探究の問いの種は「関心の言語化」から
ルミナ
ステップ1は、もやっとした関心を言葉として外に出すところだよ。高等学校の手引(今、求められる力を高める総合的な探究の時間の展開)には「問いの顕在化」という考え方が出てくるの。
トモル
顕在化…見えるようにする、ってこと?
ルミナ
そう。手引は、生まれた問いを生徒が自覚できるように顕在化させることが大切だとしていて、そうすると生徒は違和感「気になるな」、必要感「何とかしたいな」、矛盾「解決したいな」を抱くようになる、と書いているの。
トモル
気になる、何とかしたい、解決したい。生徒の口ぐせをそのまま拾えばいいんだ!
ルミナ
そうそう。手引は、現状を比べる軸も3つ挙げているよ。過去や未来と比べる時間軸、他の地域や国と比べる空間軸、それに専門家や地域の大人、友達の考えと比べる立場軸。比べたところに問いが生じる、という説明なんだ。
| 比べる軸 | 手引の説明 | テーマ「地域の商店街」で出る言葉の例 |
|---|---|---|
| 時間軸 | 過去はどうだったか、未来はどうあるべきか | 昔はもっと人がいたらしい |
| 空間軸 | 他の地域や国ではどうか | 隣の市の商店街はにぎわっている |
| 立場軸 | 専門家・地域の大人・友達の考えと比べる | お店の人と高校生で見え方が違う |
トモル
右の列の例も手引に載ってるの?
ルミナ
右の列は、軸の使い方をイメージしてもらうためにこの記事で作った例だよ。手引そのものに書かれているのは、左と真ん中の列だけ。手引には、言葉を出す道具として「ウェビング」も紹介されているの。
トモル
ウェビングって、クモの巣みたいなあれ?
ルミナ
そう! 手引の事例では、中心テーマを決めて、そこから連想することや関連することを書き込み、できたウェビングを分析する流れなんだ。分析では、同じ内容を線で囲む、関連あるキーワードを線でつなぐ、重要だと思うキーワードに印を付ける、他者との考えを比較しながら課題を明らかにする、とされているよ。
トモル
書き出して終わりじゃなくて、つなげて印を付けるところまでやるんだね。
ルミナ
うん。実践例は「society 5.0」が中心テーマで、そこから「AIが今後どのように産業や生活分野に使われるか」や「セキュリティー対策やプライバシーの問題についての対策」といった課題が出てくる様子が載っているよ。言葉が出そろったら、次は広すぎる関心を細くしていこう!
探究の問いを具体化するには対象と範囲を絞る

トモル
ステップ2の絞り込みが、いちばん苦手かも。生徒の問いって、だいたい大きすぎるんだよね。
ルミナ
手引に、ちょうどいい例があるよ。世界の環境汚染に関心をもった生徒が、マイクロプラスチックによる海の環境汚染に着目したという事例なんだ。
トモル
世界の環境汚染から、マイクロプラスチックへ。ずいぶん細くなったね!
ルミナ
手引はこれを「環境汚染の問題をマイクロプラスチックの問題に焦点化している」と説明して、高度化した探究の姿の一つ「鋭角性」に当てはめているの。鋭角性は、焦点化し深く掘り下げて探究している姿のことだよ。
トモル
絞る候補が多いときは、どれを選べばいいの?
ルミナ
手引の「問題を序列化して課題を設定する」事例が参考になるよ。カードや付箋紙に問題を書き出し、序列化するための尺度を決めて、尺度に沿って並べる流れなんだ。尺度の例として、効果性、実現可能性、公共性、緊急性、経済性、安全性が挙がっているよ。
| 手引の例 | 書き出された問題の一部 | 選んだ尺度 | 設定された課題 |
|---|---|---|---|
| 情報化の進展 | 高齢者がデジタル化の急速な進展についていけていない、など | 実現可能性 | 高齢者にとって役立つデジタル活用講座を企画しよう |
トモル
尺度を先に決めておけば、話し合いで「どれもいいよね」で止まらずに済みそう!
ルミナ
そうなの。小学校の解説にも、児童が課題への取り組み方を考えつかない場合には、教師がより達成しやすい小さな課題に分けて示したりすることが適切だ、とあるよ。小さく分けるのは、手を抜くことじゃないんだ。
トモル
対象は絞れた。でも、まだ「マイクロプラスチックについて」の段階だよね。
ルミナ
いいところに気づいたね。そこを「問い」の形にするのがステップ3だよ!
リサーチクエスチョンの作り方と問いの形
トモル
リサーチクエスチョンの作り方って、決まった型があるの?
ルミナ
一次資料に「この型で書きなさい」という決まりはないよ。ただ、手引の単元計画の例には、課題を設定し、リサーチクエスチョンと仮説を立て、探究計画書を作成するという学習活動が並んでいるの。問いと仮説はセットで立てる、というのが読み取れるポイントだね。
トモル
問いと仮説がセットなんだ。
ルミナ
マイクロプラスチックの事例だと、生徒は「プラスチックによる海の環境汚染が進んでいるならば、海塩にマイクロプラスチックが含まれているのではないか」という仮説を立てているの。裏返すと、問いは「海塩にマイクロプラスチックは含まれているか」になるよね。
トモル
おお、それなら確かめ方が浮かぶ! 「マイクロプラスチックについて」とは全然ちがうね。
ルミナ
解説と手引の例を見ると、問いや課題の形にはいくつかのパターンがあるよ。下の表の分け方はこの記事で整理したもので、例文はどれも一次資料に出てくるものだよ。
| 問いの形 | 一次資料に出てくる例 | 出典 |
|---|---|---|
| 何が起きているかを明らかにする | 環境問題が社会に与える影響は何か | 高等学校解説 |
| 二つのものの関係を調べる | 世界の環境問題と私が住む地域の環境との関連 | 高等学校解説 |
| 仮説を確かめる | 海塩にマイクロプラスチックが含まれているのではないか | 高等学校手引 |
| 解決に向けて行動する | 高齢者にとって役立つデジタル活用講座を企画しよう | 高等学校手引 |
トモル
最後の「企画しよう」も問いの仲間なんだ。
ルミナ
解説も手引も「問いや課題」とひと続きで書いているの。表を見ても、知りたいことを明らかにする形と、何とかしたいことに取り組む形の両方が出てくるよ。
トモル
形はわかった。最後の点検って、何を見ればいいの?
立てた探究の問いが検証できるかを点検する
ルミナ
ステップ4は、立てた問いが本当に確かめられるかのチェックだよ。軸になるのが、高等学校の解説と手引が挙げる目的と解決の方法に矛盾がない(整合性)という見方なんだ。
トモル
目的と方法が食い違ってないか、ってことだね。
ルミナ
そう。マイクロプラスチックの事例では、仮説を確かめるために関係機関と連携して、濾過実験の残留物の元素分析をしているの。手引はこれを、海塩に含まれているかどうかを確かめるために妥当な方法を選んでいる、と説明しているよ。
トモル
問いがはっきりしていたから、方法も選べたんだね。
ルミナ
その通り! 小学校の解説も、課題は解決への意欲を高めるとともに、解決への具体的な見通しをもてるものだ、としているの。一次資料の記述をもとに、点検の順番をこう並べてみたよ。
- 問いの中に、調べる対象が一つの言葉で入っているかを見る(焦点化できているか)
- その問いに対する仮説を、一文で言えるかを試す
- 仮説を確かめる方法(調査・実験・聞き取りなど)を一つ以上挙げる
- 目的と方法に矛盾がないかを確かめる(整合性)
- 自分の生活や将来とのつながりを一言で説明できるかを確かめる
トモル
5つ目は、確かめられるかとは別の話じゃない?
ルミナ
高等学校の解説では、自分で課題を発見するとは、設定した課題と自分自身との関係が明らかになることも意味する、とされているの。確かめられても自分と無関係な問いだと、総合的な探究の時間の課題としては弱くなるんだ。
トモル
点検で引っかかったら、どうするの?
ルミナ
ステップ2に戻って絞り直すよ。マイクロプラスチックの事例でも、濾過実験では見付けることができなかったので実験方法を変更しているの。手引は、一つの仮説が否定されても他の可能性を模索し新たな仮説を立てる姿を「広角性」と呼んでいるよ。
トモル
仮説が外れても終わりじゃないんだ。ところで、問いづくりで先生が勘違いしやすい点ってある?
探究の問いの立て方でよくある誤解
ルミナ
よく聞く誤解を、一次資料と並べておくね。
トモル
待つだけじゃだめなんだ。
ルミナ
高等学校の解説には、体験を通して新たな関心や疑問が生じるよう特定の体験を設定することも、教師の意図的で計画的な指導の一環だとあるよ。前年度までの探究の成果と課題を示したり、具体的な活動を複数提案して生徒自身が問いをもつように促したりしてもよい、とも書かれているの。
トモル
例を見せるのはアリなんだね。ほかの誤解は?
ルミナ
「最初に立てた問いは最後まで変えちゃいけない」も多いよ。さっきの通り、解説は問いや課題が問い直されて質や精度が高まることを前提にしているの。それと、問いは小さすぎてもいけない、という不安もよく聞くね。
トモル
小さい問いだと、探究っぽくない気がしちゃうんだよ。
ルミナ
小学校の解説の例が参考になるよ。「地域のよさって何だろう。」という最初の疑問が、情報を集めて話し合う中で「地域の魅力を調べよう。」へ更新されていく様子が描かれているの。始まりは素朴でいいし、そこから磨けばいいんだ!
トモル
安心した! 最後に、これから問いの立て方の扱いが変わる可能性はあるの?
探究の問いの立て方はこれからどう変わるのか
ルミナ
中央教育審議会では、次の学習指導要領に向けた検討の場として「生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループ」が開かれているの。2025年12月26日の第3回では、課題の設定について事務局から提案があったの。
トモル
どんな提案?
ルミナ
課題の質の向上に向けて、「問いかけ」の視点や、興味・関心の「裾野」を広げる方策を例として整理し、参考資料等の形で示すことを検討してはどうか、という提案だよ。「問いかけ」の視点の例は、その課題はあなたの日々の生活や将来の生き方にとってどのような意味や魅力があるのか、他者・社会・自然にとってどのような意味や魅力があるのか、というものなんだ。
トモル
それって、さっきの点検の5つ目と近いね!
ルミナ
近いね。ただしこれは審議中の提案で、まだ決まったことではないから注意してね。議事録では、あくまで参考で、具体的な取組は学校裁量であることが前提だと説明されているよ。同じ回では、一度設定した課題に拘泥する必要がないことなども参考資料等で示す検討が提案されているの。
トモル
議論の詳しい中身はどこで読めるの?
ルミナ
素朴な問いが洗練されていくイメージは探究学習のテーマの決め方で、課題の質の考え方は探究学習で大事なことで紹介しているよ。原文は第3回の議事録で読めるからね。
トモル
問いを立てたあとの進め方も知りたくなってきた。
ルミナ
それなら探究学習の進め方が続きになるよ。最後に、この記事の要点を3行にしておくね!
探究学習の問いの立て方の要点
トモル
「〜について」を「〜は含まれているか」に変える、って覚えておくよ。ありがとう、ルミナ!
ルミナ
うん! 表や図の例文は解説と手引から引いているから、生徒に配る前に下の一次ソースで前後の文脈も見ておくと安心だよ。