トモル

ルミナ、探究学習の指導案や年間計画って、何から作ればいいの? 様式もバラバラで、正解が分からなくて。

ルミナ

探究学習の指導案と年間計画は、全体計画・年間指導計画・単元計画の三層で考えて、上の計画を踏まえて下を作るのが基本だよ。指導案は、単元計画を具体的に表すための書式として位置付けられているんだ。

トモル

えっ、三層もあるの? 指導案だけ作ればいいと思ってた。

ルミナ

指導案だけだと、その単元が学校の目標のどこにつながるのかが見えなくなっちゃうんだ。逆に言うと、三層の役割さえ分かれば、どの様式でも迷わなくなるよ。

トモル

様式って決まってないの?

ルミナ

高校向けの文部科学省の手引には、年間指導計画には特に固定的な様式はないと書かれているよ。必要な要素が入っていれば、各学校が使いやすい形に工夫していいんだ。

トモル

なるほど、まず中身を知ればいいんだね。

探究学習の指導案と年間計画は三層で考える

全体計画・年間指導計画・単元計画が決める問いの違いを示した図解

ルミナ

まずは三層の全体像から見ていこう。言葉の定義は学習指導要領解説──学習指導要領を詳しく説明した文部科学省の公式資料──に載っているよ。

トモル

全体計画って、何のための計画なの?

ルミナ

高校の解説では、全体計画は指導計画のうち、学校として、この時間の教育活動の基本的な在り方を示すもの。つまり学校として「何を育てるか」を決める計画だね。

トモル

じゃあ年間指導計画は?

ルミナ

全体計画を踏まえて、どのような学習活動を、どのような時期に、どのように実施するか等を示すもの。1年間の時間の流れの中に単元を位置付けて示す計画だよ。

トモル

単元計画は、さらにその中身ってこと?

ルミナ

そう! 単元とは、課題の解決や探究活動が発展的に繰り返される一連の学習活動のまとまり。単元計画はそのまとまりについての指導計画なんだ。そして指導案は、この単元計画を具体的に表すための書式として解説に登場するよ。

計画決めること作る単位
全体計画学校としての目標と内容、活動や評価の基本方針学校(課程・学科ごとの場合もある)
年間指導計画どの単元を、いつ、何時間で行うか学年・学級
単元計画(指導案)1つの単元をどう探究として展開するか単元

トモル

三つの計画はバラバラに作っていいの?

ルミナ

そこが大事なところ。解説は、全体計画を単元として具体化し、1年間の流れの中に配列したものが年間指導計画であり、年間指導計画や個々の単元の成立のよりどころを記したものが全体計画だ、と説明している。この二つは関連し対応する関係にあると書かれているんだ。

トモル

上がよりどころで、下が具体化なんだね。

ルミナ

ちなみに、小学校・中学校は「総合的な学習の時間」、高校は「総合的な探究の時間」と名前が違うけど、計画を三層で考える構造は同じだよ。名前の違いは総合的な学習の時間と探究の違いにまとめてあるよ。

トモル

じゃあ一番上の全体計画から聞かせて!

総合的な学習の時間の全体計画に書くこと

ルミナ

全体計画は、解説が中身を3つのグループに分けて示しているから、それに沿うと迷わないよ。

トモル

3つのグループ?

ルミナ

「必須の要件として記すもの」「基本的な内容や方針等を概括的に示すもの」「その他、各学校が全体計画を示す上で必要と考えるもの」の3つ。高校の解説でも小学校の解説でも同じ分け方だよ。

グループ書くもの
必須の要件各学校における教育目標、各学校において定める目標、各学校において定める内容(目標を実現するにふさわしい探究課題、探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力)
基本方針を概括的に学習活動、指導方法、指導体制(環境整備、外部との連携を含む)、学習の評価
各学校が必要と考えるもの年度の重点、地域や学校・生徒の実態、保護者や地域の願い、各教科等との関連、異校種や外部との連携など

トモル

必須の要件がいちばん大事ってこと?

ルミナ

そうだね。高校の手引は、必須の要件の中でも「各学校において定める目標」「目標を実現するにふさわしい探究課題」「探究課題の解決を通して育成を目指す具体的な資質・能力」を全体計画の中心となる三要素と呼んでいるよ。

トモル

探究課題と資質・能力がセットなんだ。

ルミナ

うん。探究課題は「何について探究するか」、資質・能力は「その探究を通して何ができるようになるか」。この2つを合わせて、各学校が定める「内容」になるんだ。

トモル

全体計画って、細かく書くほどいいの?

ルミナ

逆だよ。解説は、全体計画の書式について、各要素の関係が分かるよう簡潔に示すことが求められる、としている。必要な内容や方針に絞って、箇条書きにするなど簡潔な記述となるよう工夫することも求めているんだ。

トモル

えっ、簡潔でいいんだ。ちょっと安心した。

ルミナ

もう1つ押さえたいのは、指導計画を構成する要素は、指導計画のどこかで示していればよく、全体計画と年間指導計画の少なくとも一方で明示すれば足りる、と解説に書かれていること。同じことを両方に重ねて書く必要はないんだ。

トモル

全体計画の役割は分かった。次は年間指導計画だね。

総合的な学習の時間の年間指導計画の作り方

ルミナ

年間指導計画は、1年間の探究の地図になる計画だね。まず書く要素から!

トモル

何を書けばいいの?

ルミナ

解説が挙げる主たる要素は、単元名、各単元における主な学習活動、活動時期、予定時数の4つ。高校の手引は、これに加えて単元のねらい、生徒の意識、各教科・科目等との関連、他学年や中学校、地域や外部講師との関連などを記すことも考えられる、としているよ。

トモル

単元はいくつ入れるのが普通なの?

ルミナ

決まりはないよ。解説には、1年間を通して一つの単元を行う場合や、複数の単元を行う場合などがあると書かれている。どちらでも、学習活動や生徒の意識が連続し発展するように配列することが大切とされているんだ。

トモル

時数はどうやって決めるの?

ルミナ

高校の場合、手引には、1単位時間を50分とし、35単位時間の授業を1単位として、卒業までに3〜6単位に見合う標準授業時数105〜210単位時間を確保する、と書かれているよ。この時数を確保した上で、各単元に必要な時数を配当するんだ。

トモル

105〜210時間を3年間でどう割るかを決めるってことか。

ルミナ

そう。手引は、全ての年次で実施する方法、特定の年次で実施する方法、特定の学期や期間に行う方法を組み合わせることもできる、としている。そして時数が確保できているかを週単位・月単位・学期単位などで把握しなければならない、とも書いているよ。

トモル

作るときに気を付けることは?

ルミナ

高校の解説は、年間指導計画の作成と実施で配慮すべき点を4つ挙げているよ。

配慮すべき点具体的には
生徒の学習経験に配慮する1年生は中学校までの、2年生以降はその学年までの学習経験と成果を事前に把握して生かす
実社会との接点と活動時期を生かす季節の変化や地域・校内の行事を、時期と内容の両面から展開に関連付けられるか検討する
他教科等との関連を明らかにする各教科・科目等で身に付けた資質・能力を把握し、探究の中で活用できるようにする
外部の教育資源と交流を意識する保護者や地域の人、専門家、社会教育施設、企業、NPOなどの協力を得られるようにする

トモル

行事の時期って、たしかに外せないね。

ルミナ

解説も、学習活動が特定の時期に集中することで効果が高まったり、適切な時期を逃すことで効果が薄くなったりすることがある、と書いているよ。だから年間計画の段階で時期を押さえておくんだ。

トモル

で、それをいつ作るの? 4月?

ルミナ

前年度のうちに教育課程の見直しをしておくのが解説の考え方。前年度の学習活動の様子と過去の実践事例を基に、全体計画を参照して計画を立て、見通しをもって4月を迎えることが大切とされているよ。見直しの観点として、実施時期は適切だったか、時数の配当に過不足はないか、が挙げられているんだ。

トモル

年間の流れが決まったら、次は単元の中身だね。

探究の単元計画の作り方は構想から始める

単元計画を作る手順と評価・改善で戻る流れを示した図解

ルミナ

ここからが指導案につながる単元計画の話。いきなり書式を埋めるんじゃなくて、構想するところから始まるよ。

トモル

構想って、頭の中で考えるってこと?

ルミナ

そう。高校の手引は、単元計画の作成を「単元を構想する」と「単元計画を具体的に書き表す」の二つに分けている。しかも二つの作業を行きつ戻りつ繰り返して、よりよい単元計画にしていくことが大切だ、と書いているんだ。

トモル

手順はあるの?

ルミナ

手引には「単元計画作成の手順チャート」が載っていて、AからGの7つの手順で示されているよ。

  1. 全体計画・年間指導計画を踏まえる
  2. 「教師の意図」「生徒の関心や疑問」「教材の特性」の三つの視点から、中心となる活動を思い描く
  3. 探究活動として単元が展開するイメージを思い描く(生徒の意識の向かう方向の予測と、十分な教材研究)
  4. 授業時数、学習環境、学習形態・指導体制、各教科・科目等との関連などから、単元構想が実現可能かを検討する
  5. 単元計画としての学習指導案を書き表す
  6. 単元を実践する
  7. 実践を振り返って単元計画を見直し、次年度の全体計画や年間指導計画の改善に役立てる

トモル

指導案を書くのは5番目なんだ!

ルミナ

そうなんだ。三つの視点は、どこから考え始めてもいいけど、残りの二つにも十分に考えを巡らせることが大切、とされているよ。

トモル

生徒の関心から始めるのが一番よさそうだけど。

ルミナ

それも1つの出発点だね。ただ手引は、生徒の関心や疑問には、まだ言語化されていない部分もあると注意しているよ。教師の働きかけや体験の機会によって、無意識にあった関心を生徒が自覚することもあるんだ。

トモル

展開のイメージは、どうやって予測するの?

ルミナ

手引は、生徒の立場で考えること、タイプの異なる生徒を想定して具体に即して予測すること、そして複数の教師で予測して、意見が分かれた点は慎重に検討することを挙げているよ。

トモル

一人で抱えなくていいんだね。4番の「実現可能か」は何を見るの?

ルミナ

活動の流れに不自然さや無理がないかをまず見る。無理があれば順番を入れ替えたり、間に別の活動を挟んだり省略したりする。その上で時数や学習環境、外部との連携まで含めて吟味するんだ。

トモル

構想ができたら、いよいよ指導案だね。

探究学習の指導案に書く項目

ルミナ

指導案は、解説では「単元計画としての学習指導案」として項目が示されているよ。小学校の解説にも高校の解説にも、同じ5項目が並んでいるんだ。

項目解説が示す中身
単元名どのような学習が展開されるかを一言で端的に表したもの
単元目標どのような学習を通して、どのような資質・能力の育成を目指すのか
児童・生徒の実態探究課題や育てたい資質・能力、中核となる学習活動についての実態や経験
教材について教材のどこに価値があるのか、出会うことで何を学べるのか
単元の展開探究課題・資質・能力・興味関心を基に中核となる学習活動を設定し、時数や学習環境まで具体化する

トモル

単元名って、ただのタイトルじゃないの?

ルミナ

解説は単元名に2つの配慮を求めているよ。1つは、学習の姿が具体的にイメージできる単元名にすること。もう1つは、学習の高まりや目的が示唆できるようにすること。

トモル

「教材について」は、教材の紹介を書けばいい?

ルミナ

そこが落とし穴! 解説は、教材の紹介にとどまらず、その教材に出会うことで学ぶことが期待できる学習事項や育成が期待できる資質・能力を分析して、教材のどこに価値があるのかを具体的に記すことが大切、と書いているよ。

トモル

高校の手引だと項目は増えるの?

ルミナ

手引の学習指導案の例では、単元名、単元目標に加えて「単元設定の理由」「単元の評価規準」「単元の展開(指導計画・評価計画)」が並んでいるよ。単元設定の理由は、なぜこの単元を設定したかを複数の要素から述べるもので、手引の図には生徒の実態や教材についてなどの要素が添えられているんだ。

トモル

評価規準はどう書くの?

ルミナ

手引の例では、知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度の3観点で示されている。思考・判断・表現は、課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現の各過程で育成される資質・能力を生徒の姿として書くことが考えられる、とされているよ。評価の作り方は探究学習の評価で詳しく扱っているよ。

トモル

単元の展開は?

ルミナ

手引の例は、学習過程ごとに時間数と活動内容を書いて、それぞれの活動の指導のポイントや関連する教科・科目等の学習内容、評価規準も示す形になっている。手引には単元名「地域活性化プロジェクトを立案しよう」(第2学年・45時間扱い)という具体例も載っているから、書き方の見本として原文を見てみてね。

トモル

項目は分かったけど、作るときにやりがちな間違いもありそう。

探究学習の計画でよくある誤解

ルミナ

いい視点だね! 一次資料の記述と食い違いやすいところを3つ挙げるよ。

トモル

毎年作り直すのは大変そう…。

ルミナ

ゼロから作り直すという意味ではないよ。前年度の実践を土台にしつつ、目の前の生徒に合わせて見直す、ということだね。解説は単元づくりを教師の自律的で創造的な営みと表現しているんだ。

トモル

年度の途中で計画とずれたらどうするの?

ルミナ

解説は、年度当初の計画を必要に応じて見直していく柔軟で弾力的な姿勢が大事だとしているよ。高校の解説では、生徒の意見を取り入れながら計画を修正すること、そして報告会や中間発表会などの節目を活用して見直すことが挙げられているんだ。

トモル

中間発表会は、計画を点検する場でもあるんだね。

ルミナ

そのとおり。計画に沿った進め方そのものは探究学習の進め方にまとめてあるよ。最後に、この計画づくりがこれからどうなるかも見ておこう!

探究の指導計画はこれからどう変わる(審議中)

ルミナ

次の学習指導要領に向けて、中央教育審議会のワーキンググループで、各学校が作る計画を見直す議論が進んでいるよ。

トモル

えっ、全体計画がなくなるの?

ルミナ

なくなるという話ではないよ。2026年3月10日に開かれた第5回で、事務局から「各学校で作成する計画等の内容の精選」として提案が示されたんだ。中身は3点あるよ。

提案の内容現状として示された指摘
全体計画に示す内容は、育成を目指す資質・能力を端的に記載する資質・能力の三つの柱を3から4の要素に細分化して学年・単元ごとに記載するのは、全体像を捉えにくくしている
学習活動・指導方法・指導体制・評価は単元計画レベルで記載し、全体計画への記載は必須としない具体の活動と結び付くため、単元計画の水準で具体化されるのが望ましい
単元計画の評価は3観点を長期的かつ一体的に捉え、目標に照らした視点を5要素程度で明示する評価規準を細かく作成するのは労力がかかり、評価計画が過度な評価材料集めを誘発しかねない

トモル

現場の負担が減りそうな話だね。

ルミナ

委員からも、現場で感じている課題の改善に踏み込んだ見直しの方向性だという意見や、端的に示す形はいい方向性だという意見が出ていたよ。一方で、端的に書くからこそ内容の質や量をどうするかはまだイメージが持てない、という声もあったんだ。

トモル

じゃあ、もう決まったってこと?

ルミナ

そこは要注意。いずれも「〜としてはどうか」という事務局の提案で、審議中だよ。新しい学習指導要領や解説で最終的にどうなるかは、まだ決まっていないんだ。

トモル

今、計画を作るならどうすればいい?

ルミナ

今の計画は、現行の学習指導要領解説と手引に沿って作るのが基本だね。その上で、全体計画を簡潔に書くという点は、現行の解説もすでに求めていることだよ。議論の全体像は探究学習はこれからどう変わる?、会議の始まりは第1回のまとめと第2回のまとめで読めるよ。

トモル

最後に、全体をもう一度ぎゅっと確認したい!

探究学習の指導案・年間計画の要点

トモル

指導案って、構想を書き表した最後の形だったんだね。ありがとう、ルミナ!

ルミナ

どういたしまして! 項目も手順も文部科学省の資料に書いてあるものだから、校内で計画を見直すときは末尾のリンクから原文に当たってみてね。