トモル
ねえルミナ、探究学習って大学入試に関係あるの? 「総合型選抜では探究が大事」って聞くんだけど、どこまで本当なのか分からなくて。
ルミナ
大学入学者選抜実施要項では、探究の成果は主に調査書の「総合的な探究の時間の記録」と、本人が書く活動報告書で扱われるよ。総合型選抜は本人が書く資料を必ず評価に使う方式で、どれくらい重く見るかは各大学が募集要項で示すんだ!
トモル
えっ、「探究をやれば受かる」みたいな話じゃないんだね。
ルミナ
うん。今日は文部科学省が出している令和9年度大学入学者選抜実施要項(令和8年5月27日付けの通知)と、その様式に書いてあることだけで話すね。合否にどれくらい効くかは要項には書かれていないから、そこは断定しないよ。
トモル
年度で中身が変わるって聞いたことあるけど、令和9年度っていつの入試?
ルミナ
2027年4月に大学へ入学する人向けの入試だよ。大学入学共通テストの本試験が令和9年(2027年)1月16日・17日と定められている回だね。要項は毎年度出し直されるから、別の年度に受ける場合はその年度の要項を見てね!
探究学習は大学入試の要項でどう位置づけられているか
トモル
そもそも、大学入試の決まりごとの中に「探究」って言葉は出てくるの?
ルミナ
いちばん最初の「基本方針」から出てくるよ。要項は、大学が評価する学力の三要素を挙げていて、その二つ目が知識・技能を活用して、自ら課題を発見し、その解決に向けて探究し、成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等なんだ。
トモル
「探究し、成果等を表現する」って、まさに探究の授業でやることだ!
ルミナ
そうなんだ。ただしこれは入試全体の方針で、探究の時間だけを指しているわけじゃないよ。一つ目が知識・技能、三つ目が主体性を持ち多様な人々と協働しつつ学習する態度で、大学はこの三つをアドミッション・ポリシー──大学が「こんな学生に来てほしい」と示す入学者受入れの方針──に基づいて評価するんだ。
トモル
入試の種類はいくつあるんだっけ?
ルミナ
要項が示す入試方法は3つだよ。表にするね。
| 入試方法 | 要項上の性格 | 探究の成果に関わる書類 |
|---|---|---|
| 一般選抜 | 学力検査や小論文等を主な資料とし、調査書や本人の記載する資料等を組み合わせる | 調査書、本人の記載する資料等(大学による) |
| 総合型選抜 | 詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等で総合的に評価する | 本人の記載する資料(必ず活用)、調査書 |
| 学校推薦型選抜 | 出身高校の校長の推薦に基づき、調査書を主な資料とする | 調査書、推薦書、本人の記載する資料等(大学による) |
トモル
一般選抜にも調査書は出てくるんだ。
ルミナ
うん、要項は調査書の提出を入学志願者から求めるものとしているよ。ただ、探究の成果を詳しく書く場面が制度として組み込まれているのは、総合型選抜と学校推薦型選抜のほうなんだ。次はその二つを順番に見ていこう!
総合型選抜で探究の成果が使われる場面

トモル
総合型選抜って、昔のAO入試のことだよね? 探究とはどうつながるの?
ルミナ
要項では、総合型選抜は一般選抜とは異なる観点や方法で評価するという前提のもと、詳細な書類審査と時間をかけた丁寧な面接等を組み合わせる入試方法とされているよ。探究の成果が入り込むのは、その「書類」と「面接」の部分なんだ。
トモル
書類って、何を出すの?
ルミナ
要項には、公募制という性格から志願者本人の記載する資料を必ず評価に活用すると書かれているよ。その資料の例として挙がっているのが、活動報告書、大学入学希望理由書、学修計画書だね。
トモル
「必ず」なんだ! 面接もあるの?
ルミナ
面接による評価も必ず行うことになっているよ。面接にはディベート、集団討論、プレゼンテーション、口頭試問なども含まれるんだ。さらに、調査書などの出願書類だけでなく、教科・科目に係る個別テスト、大学入学共通テスト、小論文・面接等、資格・検定試験等のうち少なくとも一つを必ず活用して、そのことを募集要項に書くことになっているよ。
トモル
じゃあ、探究の発表が得意な生徒はそこで生かせそうだね。
ルミナ
要項は、志願者本人が記載する資料について、特に総合型選抜や学校推薦型選抜では、プレゼンテーションなどにより積極的に活用するとしているよ。探究でまとめた内容を自分の言葉で説明する場面は、制度の上でも想定されているんだ。
トモル
時期はいつごろなの?
ルミナ
令和9年度の要項では、総合型選抜の入学願書受付は令和8年(2026年)9月1日以降、判定結果の発表は令和8年11月1日以降とされているよ。次は、校長の推薦が要る学校推薦型選抜を見てみよう!
学校推薦型選抜で探究の成果が使われる場面

トモル
学校推薦型選抜は、総合型選抜と何が違うの?
ルミナ
いちばんの違いは、出身高校の校長の推薦に基づくことだよ。要項は、本人の意志だけで出願できるものではなく、その大学・学部で学ぶにふさわしい生徒を高等学校長が判断するものだと説明しているんだ。そして調査書を主な資料にするよ。
トモル
推薦書には何を書くの?
ルミナ
要項は、推薦書の中に、大学・学部のアドミッション・ポリシーに対応する志願者本人の学習歴や活動歴を踏まえた、学力の三要素に関する評価の記載を求めているよ。推薦書のイメージ例(参考様式1)の推薦理由欄にも、同じ趣旨の注意書きがあるんだ。
トモル
「探究の成果を書くこと」とは書いてないんだね。
ルミナ
そこは正確に言うと、推薦書の様式に「総合的な探究の時間」という言葉は出てこないよ。学習歴や活動歴の一つとして探究に触れるかどうかは、推薦する学校の判断になるね。
トモル
面接はこっちもあるの?
ルミナ
学校推薦型選抜でも面接による評価を必ず行うとされているよ。ただし例外があって、高校との緊密な連携で丁寧なマッチングが図られ、合格したら入学すると確約して受ける非公募型の場合は、大学の実情に応じて面接の要否を判断できるんだ。
トモル
日程は総合型選抜よりあとなんだね。
ルミナ
令和9年度の要項では、入学願書受付は令和8年11月1日以降、判定結果の発表は令和8年12月1日以降で、一般選抜の試験期日の10日前までとされているよ(大学入学共通テストを使う場合は別の期日が定められているから、要項で確かめてね)。二つの入試の書類に共通して出てくるのが調査書だから、次はその中身をのぞいてみよう!
調査書の「総合的な探究の時間の記録」には何が書かれるか
トモル
調査書って、成績が書いてある書類だよね? 探究のことも載ってるの?
ルミナ
載っているよ。調査書の様式(別紙様式1)には「5.総合的な探究の時間の記録」という欄があって、中は「学習活動」「観点」「評価」に分かれているんだ。書くのは生徒ではなく高校だよ。
トモル
そこに点数がつくの?
ルミナ
点数はつかないよ。調査書記入上の注意事項では、指導要録と同様に、総合的な探究の時間に行った学習活動と各学校が自ら定めた評価の観点を書いた上で、生徒の学習状況に顕著な事項がある場合などにその特徴を書く等、生徒にどのような力が身に付いたかを端的に記入するとされているんだ。
トモル
文章で書くってことだね。
ルミナ
そう。高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説の総合的な探究の時間編でも、この時間は教科のように数値的に評価せず、どんな資質・能力が身に付いたかを文章で記述するとされているよ。調査書の書き方は、その考え方と同じ流れにあるんだ。
トモル
課題研究で代替している学校はどうなるの?
ルミナ
職業教育を主とする専門学科で「総合的な探究の時間」の全部を「課題研究」等で代替して履修していない場合、その欄には斜線を引くことになっているよ。理数の「理数探究基礎」や「理数探究」で全部を代替した場合も同じ扱いだね。
トモル
大学は調査書のどこを見るの? 成績だけ?
ルミナ
要項は、大学に対して、調査書の「3.各教科の学習成績の状況」だけではなく他の記載事項も有効に活用するよう求めているよ。どの欄をどう使うかは各大学が決めることで、要項にはどの程度重く見るかまでは書かれていないんだ。
| 調査書の欄 | 記入のポイント(注意事項より) | 探究との関係 |
|---|---|---|
| 5.総合的な探究の時間の記録 | 学習活動と各学校が定めた観点を記入し、どのような力が身に付いたかを端的に記入 | 探究の中身が直接書かれる欄 |
| 7.指導上参考となる諸事項 | 要点を箇条書きするなど必要最小限にとどめる | 学校外の活動などは指導要録の記述を基に精選 |
| 3.各教科の学習成績の状況 | 各教科ごとに各科目の評定の合計数を評定数で割った数値を記入 | 探究の時間は数値で評定しない |
トモル
学校が書く調査書の話はわかったよ。じゃあ、生徒本人が書く活動報告書はどうなってるの?
活動報告書の書き方と探究の課題研究
ルミナ
活動報告書は、生徒自身が探究の中身を書ける書類だよ。要項は、活動報告書を使う場合、高校までの学習や活動の履歴がわかるよう、最初の記載内容として「総合的な探究の時間」や理数探究等において取り組んだ課題研究等を挙げているんだ。
トモル
探究がいちばん最初に書いてあるんだ!
ルミナ
二つ目は、学校の内外で意欲的に取り組んだ活動だよ。生徒会活動、部活動、ボランティア活動、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)などの課題研究、資格・検定、大会・コンクール、留学・海外経験などが例に挙がっているね。
トモル
書く欄はどうなってるの? 自由に書いていいの?
ルミナ
要項の参考様式2に「活動報告書のイメージ例」があって、欄の並びはこんな感じだよ。
- 学業に関する活動のうち学内での活動内容と活動期間(「総合的な探究の時間」、部活動、生徒会活動等において取り組んだ課題研究等)
- 学業に関する活動のうち学外での活動内容と活動期間(ボランティア活動、各種大会・コンクール、留学・海外経験等)
- 課題研究等に関する活動として、課題テーマを選んだ理由
- 課題研究等に関する活動として、概要・成果
- 資格・検定等に関する活動として、名称・級やスコア・取得等の年月
トモル
「課題テーマを選んだ理由」と「概要・成果」を分けて書くんだね。
ルミナ
そう、ここが探究とよく噛み合うところなんだ。これは要項の言葉ではなく編集部の読み方だけど、テーマを選んだ理由は探究の「課題の設定」に、概要・成果は「まとめ・表現」に近いから、授業の記録を残しておくと書きやすくなるよ。探究の4段階そのものは探究学習の進め方|4段階の回し方と計画の作り方で詳しく書いたよ。
トモル
この様式は、全部の大学で同じものを使うの?
ルミナ
そこは要注意だよ。令和9年度実施要項等に関するQ&A(令和8年9月2日更新)では、参考様式2は大学側が活動報告書の作成を求める場合の「イメージ例」で、必ず作成しなければならないものではないと説明されているんだ。実際の様式や書く内容は、出願する大学の募集要項で確かめてね。
トモル
大学ごとに違うかもしれないってことか。
ルミナ
うん。要項は各大学に、調査書や本人の記載する資料等をどのように活用するのかを募集要項等に明記するよう求めているよ。令和9年度では、すべての入試区分に共通する最終期限として、募集要項は令和8年12月15日までに発表することになっているね。総合型選抜は出願が9月1日以降と早いから、志望校の募集要項がいつ出るかは早めに確かめよう。ここで、よくある思い込みを確認しておこう!
探究と大学入試のよくある誤解
トモル
周りでよく聞く話、どれが本当なのか確かめたいな。
ルミナ
要項の書き方と照らして、ずれやすいところを並べるね。
トモル
大学ごとの募集要項を見ないと、何も言い切れないんだね。
ルミナ
そうなんだ。もう一つ大事なのは、入試のために探究をやるわけではないことだよ。解説の総合的な探究の時間編には、高校教育が大学入学者選抜などの外部要因によって在り方を規定され、改革が進めにくいと指摘されてきたこと、今回の改訂は高大接続改革という一体的な改革の中で実施されることが書かれているんだ。
トモル
入試のためではなく、身に付いた力が入試でも見られるって順番なんだね。
ルミナ
その理解が近いと思うよ。探究そのものの評価の考え方は探究学習の評価はどうする?観点と規準の作り方で詳しく書いたよ。次は、この関係がこれからどうなりそうかを見ていこう!
探究と大学入試の関係はこれからどうなるのか
トモル
次の学習指導要領の話し合いで、入試のことは出てるの?
ルミナ
中央教育審議会の「生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループ」の第1回(2025年10月15日)で触れられているよ。事務局の説明の中で、探究の成果を発表する場が官民で広がり、高校・大学入試で積極的に評価を行う例が増えていることが、探究を応援する機運の一つとして挙げられたんだ。
トモル
委員からはどんな意見があったの?
ルミナ
委員からは、高校の総合的な探究の時間が近年大きく変わった要因の1つは大学入試の変化だ、という指摘があったよ。あわせて、総合で身に付けた資質・能力が高校入試でどう評価されているかの情報を提供してほしい、という意見も出ていたね。第1回の全体像は【第1回】次期指導要領へ論点総ざらい|生活・総合探究WGにまとめてあるよ。
トモル
じゃあ、入試での扱いが変わることも決まったの?
ルミナ
いいえ、決まっていないよ。ワーキンググループで話し合われているのは次の学習指導要領の中身で、大学入学者選抜実施要項そのものを変えるかどうかは、議事録では触れられていないんだ。入試の扱いは、毎年度の実施要項で確かめるのが確実だよ。
トモル
今の決まりを押さえておけば、変わったときも差分で追えそうだね。これからの議論の全体像は探究学習はこれからどう変わる?審議中の論点を解説で読めるんだっけ。
ルミナ
そうだよ! 最後に今日の中身を3行に縮めておくね。
探究学習と大学入試の要点
ルミナ
ここまでの話を、先生が生徒に説明するときの芯になる3点に絞るよ。
トモル
「探究が有利」って話を、要項の言葉で説明し直せるようになったよ。
ルミナ
よかった! 生徒の探究の記録を、テーマを選んだ理由と概要・成果に分けて残しておくと、調査書にも活動報告書にもつなげやすくなるよ。気になった部分は、下の一次ソースから原文を確かめてみてね。