トモル

ねえルミナ、探究学習の振り返りって、結局なにをどう書けばいいの?毎回「楽しかったです」で終わっちゃう気がして。

ルミナ

探究学習の振り返りは、自分の学びを見つめ直して、次の学びにつなげるための時間だよ。感想を書く時間ではなくて、「何が分かって、自分はどう変わって、次に何をするか」を言葉にする時間なんだ!

トモル

えっ、感想とは違うんだ。

ルミナ

違うよ。しかも文部科学省の資料を読むと、振り返りは「いつ」「何を」「どう残すか」まで細かく書かれているの。

トモル

それ知りたい!先生も生徒も困ってると思う。

ルミナ

順番に見ていこう。まず、振り返りとは何かからね。

探究学習の振り返りとは何か

ルミナ

「総合的な探究の時間」(高校)の手引には、振り返りの定義が書かれているよ。各授業の終末や単元の節目などに、主たる学習活動やそこでの学びについて時間を遡って見つめ直すこととされているの。

トモル

時間を遡って、見つめ直す…。

ルミナ

小学校の「総合的な学習の時間」の解説では、もう少し目的に寄せた書き方になっているよ。振り返りは、自らの学びを意味付けたり価値付けたりして自覚し、他者と共有したりしていくことにつながる、というんだ。

トモル

「意味付け」って、むずかしい言葉だね。

ルミナ

「この学びは自分にとって何だったのか」を考えて言葉にすること、と読めば大丈夫。高校の手引では、高校生は自分の在り方生き方と本気で向き合おうとする時期だから、内省的に捉えることで、潜在的に育成されていた資質・能力が顕在化すると説明されているよ。

トモル

気づいていない力が見えるようになる、ってこと?

ルミナ

そう!だから振り返りは、点数をつけるためのおまけではなくて、探究の学びそのものを支える柱なんだ。次は「いつやるのか」を見てみよう。

探究学習の振り返りはいつやるのか

振り返りを行う場面を、各授業の終末、単元の節目、探究の途中、発表のあとの4つに分け、次の学びへ戻る流れで示した図

ルミナ

「いつ振り返るか」は、実は単元の最後だけではないんだ。

トモル

最後に1回、まとめて書くものだと思ってた。

ルミナ

小学校の解説には、振り返りは必ずしも単元の最後に行うとは限らない、と書かれているよ。時には探究の過程の途中で、一旦立ち止まって振り返って考え直してみることも、主体的な学びという視点からは意義がある、というんだ。

トモル

途中で立ち止まっていいんだ。

ルミナ

いいんだよ。高校の手引にある実践例では、まさにそれをやっているの。ある高校では、生徒は1時間ごとに気付きや成果、次の時間への課題を振り返りとして記録しているよ。複数回ある発表の機会ごとにも、得られた成果や次の発表への課題、自らの成長を記録しているんだ。

振り返る場面振り返る中身(手引の実践例より)
1時間ごと気付き、成果、次の時間への課題
発表の機会ごと得られた成果、次の発表への課題、自らの成長
単元の最後1年間の振り返り記録や成果物を使った自己評価

トモル

1時間ごとに書くのって、大変じゃない?

ルミナ

そこは手引も、言語化の場面を定期的に設定しつつ、多様な記録方法を用いる工夫を勧めているよ。毎回同じ形式の作文にしなくていいということだね。

トモル

記録の仕方を変えてもいいなら、気が楽かも。

ルミナ

じゃあ次は、その「中身」だよ。何を書くのが振り返りなのかを見ていこう!

探究学習の振り返りで何を書くのか

ルミナ

高校の手引には、振り返りを充実させる意識ポイントが並んでいるよ。出来事を時間軸に沿って考えること、事象同士を関係付けて考えること、事実の背景にある原因を明らかにして考えること、の3つだね。

トモル

「何があったか」だけじゃなくて「なぜ」まで入るんだ。

ルミナ

そう。さらに、「自分自身に関すること」と「他者や社会との関わりに関すること」の二つの視点を、ポートフォリオの項目に入れるよう勧めているよ。自己の変容を生徒が認識できるようにするためだね。

トモル

自分のことと、周りとの関わり。たしかに感想だけだと、片方しか書けてないかも。

ルミナ

この手引や解説の記述をもとに、書く内容を4つの問いにすると、次のような形になるよ。ここは文部科学省が定めた型ではなく、記述を質問の形に直した一例だと思って使ってね。

  1. 何が起きたかを、時間の順に書く(例 インタビューで何を聞き、何が分かったか)
  2. なぜそうなったのか、背景や原因を考える
  3. 以前の考えと今の考えを比べて、自分がどう変わったかを書く
  4. 次に調べること、試すことを書く

トモル

3番目の「以前の考えと今の考え」って、どういうこと?

ルミナ

手引のICT活用の説明に、ワークシートなどを記録しておき、以前の考えと今の考えを比べて自己の変容を自覚させる、という使い方が出てくるんだ。変容は比べないと見えないんだよね。

トモル

実際の振り返りって、どんな感じなの?

ルミナ

国立教育政策研究所の中学校の参考資料に、生徒の振り返りカードの例が載っているよ。太陽光発電が増えることの是非を話し合った後に、ある生徒は「これまで太陽光発電のよい面しか見ていなかった」と書き、そのうえで「次回までに、問題点も調べた上で、自分の考えをはっきりさせたい」と続けているの。

トモル

おお、変わったところと次にやることが両方入ってる!

ルミナ

考えの変化と、次の課題がセットで書かれているのがポイントだね。小学校の解説には、振り返りが難しい児童には、学習してきた内容を文章やイラスト、写真などで視覚的に示して思い出す手掛かりをつくる配慮も書かれているよ。

トモル

書けない子には、まず思い出せる材料を渡すのか。

ルミナ

そう。その「材料」を貯めておく道具がポートフォリオなんだ。続けて見ていこう!

探究学習の振り返りをポートフォリオに残す方法

ポートフォリオを、残す、選ぶ・並べ替える、見返す、次の課題へ、の流れで使う図。見返す段階を強調している

トモル

ポートフォリオって、要するにファイルに全部入れておくやつ?

ルミナ

手引では、学習活動の過程や成果などの記録や作品を、生徒が主体的・計画的に集積したものと説明されているよ。ここで大事なのは、集めるのは先生ではなく生徒本人だということ。

トモル

何を入れるの?

ルミナ

手引は、活動計画表、自己評価の記録、取材メモや感想、教師や友達、保護者や地域の人のコメント、写真や報告書などを例に挙げているよ。

残すもの振り返りでの使いどころ
活動計画表最初の予定と実際の動きを比べる
取材メモ・感想そのとき感じたことを後から思い出す手掛かりにする
他者からのコメント自分では気付かなかった点を知る
写真・報告書以前と今の状態を比べて変化を確かめる

トモル

これを全部ためたら、ファイルが山になりそう…。

ルミナ

そこが落とし穴なんだ。手引の留意点には、ただの集積物にならないよう、資料の並べ替えや取捨選択をさせ、自己の学習を見通し振り返る機会を設けると書かれているよ。

トモル

整理して、見返す時間までセットなんだね。

ルミナ

そう。小学校の解説は、情報を蓄積するとき、収集した場所や相手、期日を明示しておくことを勧めているの。体験したときの感覚や思いは時間がたつと薄れるから、レポートなどで言語化して蓄積することにも配慮が必要、とも書かれているよ。

トモル

その日のうちにメモしておく、が大事なんだね。

ルミナ

審議会でも同じ関心が出ているよ。第1回のまとめの会議では、委員から、ポートフォリオは資料をためっぱなしにする単なるファイルやデータベースではなく、子供たち自身が振り返って編集することが重要だという意見が出たんだ。

トモル

国の資料と会議の意見が同じ方向を向いてるのか。

ルミナ

次は、よく話題になる評価との関係を見ておこう。

探究学習の振り返りと評価はどうつながるのか

トモル

振り返りって、評価に使われるの?

ルミナ

関係はあるけれど、同じものではないよ。高校の手引には、総合的な探究の時間では一人一人の学びや成長の様子を捉える個人内評価が大切で、そのためには一人一人が学習を振り返る機会を適切に設けることが重要だと書かれているんだ。

トモル

評価のために、振り返りの機会が要るってこと?

ルミナ

そうだね。国立教育政策研究所の参考資料には、自己の変容を見つめて書いた振り返りカードを「主体的に学習に取り組む態度」の主たる評価資料にした事例も載っているよ。

トモル

じゃあ、書いたことが点数になっちゃう?

ルミナ

ここは注意が必要だよ。高校の手引の自己評価の説明では、自己評価は自分に厳しすぎたり甘すぎたりと偏りやすいから、互いの評価を確認し合う相互評価を組み入れることが考えられる、と書かれているんだ。

トモル

振り返りは本人が自分を見つめるためのもので、評価は別に考えるんだね。

ルミナ

そう。評価の観点や規準のつくり方は探究学習の評価はどうする?に詳しくまとめてあるから、ここでは振り返りに絞るね。

トモル

最後に、ありがちな失敗も知りたい!

探究学習の振り返りでありがちな3つのつまずき

トモル

どれも心当たりがある…。

ルミナ

ひとつずつ直せば大丈夫だよ!特に3つ目は、「見返す時間」を授業に1コマ入れるだけでも変わるんだ。

トモル

これから、振り返りのルールって変わったりするの?

探究学習の振り返りはこれからどうなるのか

ルミナ

次の学習指導要領に向けた議論の中で、振り返りの位置づけも話題になっているよ。ただし、ここからはまだ決まっていない審議中の話だからね。

トモル

了解。どんな話が出てるの?

ルミナ

生活、総合的な学習・探究の時間ワーキンググループの第3回(2025年12月26日開催)で、事務局から探究の質の考え方が示されたんだ。その中で、振り返りは「プロセスの質」のうち「学びの主体的な調整」に必須の要素で、課題の洗練にもつながる重要なものと説明されたよ。

トモル

重要って言ってるなら、探究の流れに入るの?

ルミナ

そこが面白いところで、振り返りは情報の収集に関わって、整理・分析に関わってと、さまざまな単位や場面で行うことが想定されるから、「探究のプロセス」としては位置付けないという整理案が示されたんだ。

トモル

位置付けないのは、軽く扱うからじゃなくて、いつでもやるものだから、なんだね。

ルミナ

そう読めるね。第4回(2026年1月27日開催)では、委員から、過去の経験を紐解き振り返る際にキャリアパスポートの活用が有効ではないか、という意見も出ているよ。

トモル

小学校から高校まで続くやつだ。

ルミナ

審議全体の流れは、探究学習はこれからどう変わる?にまとめてあるよ。出発点の議論は第2回のまとめも読んでみてね。

トモル

最後に、要点を短くお願い!

探究学習の振り返りの要点

ルミナ

この3つが分かれば、振り返りの全体像はつかめたよ!

トモル

明日からできることって、ある?

ルミナ

次の授業の終わりに、「今日分かったこと」「以前の考えとの違い」「次に調べること」の3行だけ書いてもらってみて。書いた3行を単元の節目に見返す時間をとれば、ポートフォリオの第一歩になるよ。

トモル

それなら今週からやれそう。ありがとう!